米ロの主力戦車「エイブラムス」と「T90」の性能を比較すると?
U.S. Abrams tank compared to Russia's Wagner-driven T-90
「戦場の王様」と呼ばれる米軍の主力戦車エイブラムスM1A1(2021年、ラトビアで行われたNATOの軍事演習で) Ints Kalnins-REUTERS
<エイブラムスは、「先に敵を見つけて先に撃つことで勝利を確かなものにする」という米軍の戦闘哲学に基づいて設計された、という迫力のスペックだが、対するT90は?>
ジョー・バイデン米大統領は1月25日、ロシアの軍事侵攻を受けているウクライナへの支援として、主力戦車「エイブラムス」31両を供与すると発表した。この前日にはドイツが、ドイツ製の戦車「レオパルト2」の供与を決定していた。
バイデンは31両という数字について、「ウクライナの戦車大隊一つに相当する数」だと述べた。エイブラムスの供与は、「ウクライナが自国の領土を守り、戦略的目標を達成するための能力の強化につながる」として、ロイド・オースティン米国防長官が推奨したということだ。
米陸軍によれば、エイブラムスは悪路でも移動が可能な無限軌道(キャタピラー)で走行し、視認性が低く、地上戦において「圧倒的な火力と比類のない(乗員の)生存性、きわめて高い機動力」を通じて、乗員が敵に対して優位に立つのを可能にする兵器だ。路上最高速度は時速67キロに達する。
エイブラムスは1970年代に米陸軍のために開発され、それ以降35年以上にわたって活躍し続けている。これまでに何度も改良されており、1500馬力のタービンエンジンと120ミリの主砲のほかにも、重武装の敵勢力にも致命的打撃を与えられる特殊装甲を備えている。
エイブラムスもT90も世界トップ10に入る戦車
M1A2エイブラムスはさらに近代化されたバージョンで、車長用の全周視察装置と砲手用のコンピュータを備えている。米陸軍によれば、こうして車長と砲手が視点を同期することで素早く正確に敵を補足する「ハンターキラー能力」が実現し、エイブラムスの致死性が高まる。「砲手が標的を破壊するのと同時に、車長が戦場を調べて次なる脅威を特定することができる」ということだ。
その火力とスピードと優れた装甲から、エイブラムスは「戦場の王様」と呼ばれている、と元海兵隊将校のマシュー・ホーは本誌に語った。
一方でロシア軍とロシアの民間傭兵会社「ワグネル・グループ」が主に使用しているのは、T90戦車だ。
軍事専門サイト「ミリタリー・トゥデイ」によれば、T90はT72の後継モデルとして1992年に生産が始まり、同年ロシア政府に正式採用された。ロシアではT90を最後に主力戦車の大量生産は行われておらず、そのほかの戦車はT90の改造版やアップグレード版だ。
T90は世界市場で最もよく売れている戦車のひとつで、米軍事誌が選んだ世界の戦車トップ10にもランク入りしている。
ウクライナ軍戦車部隊の司令官であるオレクサンドル・ロマンチュク大尉は、ニュースサイト「ユーラシアン・タイムズ」に対して、「だからこそ我々が保有する兵器の質が重要なのだ」と述べた。「T90に対抗するには、ウクライナ軍の戦車3両か、あるいは大きな幸運が必要だ」