最新記事

主力戦車

米ロの主力戦車「エイブラムス」と「T90」の性能を比較すると?

U.S. Abrams tank compared to Russia's Wagner-driven T-90

2023年1月26日(木)17時31分
ニック・モドワネック

「戦場の王様」と呼ばれる米軍の主力戦車エイブラムスM1A1(2021年、ラトビアで行われたNATOの軍事演習で) Ints Kalnins-REUTERS

<エイブラムスは、「先に敵を見つけて先に撃つことで勝利を確かなものにする」という米軍の戦闘哲学に基づいて設計された、という迫力のスペックだが、対するT90は?>

ジョー・バイデン米大統領は1月25日、ロシアの軍事侵攻を受けているウクライナへの支援として、主力戦車「エイブラムス」31両を供与すると発表した。この前日にはドイツが、ドイツ製の戦車「レオパルト2」の供与を決定していた。

バイデンは31両という数字について、「ウクライナの戦車大隊一つに相当する数」だと述べた。エイブラムスの供与は、「ウクライナが自国の領土を守り、戦略的目標を達成するための能力の強化につながる」として、ロイド・オースティン米国防長官が推奨したということだ。

米陸軍によれば、エイブラムスは悪路でも移動が可能な無限軌道(キャタピラー)で走行し、視認性が低く、地上戦において「圧倒的な火力と比類のない(乗員の)生存性、きわめて高い機動力」を通じて、乗員が敵に対して優位に立つのを可能にする兵器だ。路上最高速度は時速67キロに達する。

エイブラムスは1970年代に米陸軍のために開発され、それ以降35年以上にわたって活躍し続けている。これまでに何度も改良されており、1500馬力のタービンエンジンと120ミリの主砲のほかにも、重武装の敵勢力にも致命的打撃を与えられる特殊装甲を備えている。

エイブラムスもT90も世界トップ10に入る戦車

M1A2エイブラムスはさらに近代化されたバージョンで、車長用の全周視察装置と砲手用のコンピュータを備えている。米陸軍によれば、こうして車長と砲手が視点を同期することで素早く正確に敵を補足する「ハンターキラー能力」が実現し、エイブラムスの致死性が高まる。「砲手が標的を破壊するのと同時に、車長が戦場を調べて次なる脅威を特定することができる」ということだ。

その火力とスピードと優れた装甲から、エイブラムスは「戦場の王様」と呼ばれている、と元海兵隊将校のマシュー・ホーは本誌に語った。

一方でロシア軍とロシアの民間傭兵会社「ワグネル・グループ」が主に使用しているのは、T90戦車だ。

軍事専門サイト「ミリタリー・トゥデイ」によれば、T90はT72の後継モデルとして1992年に生産が始まり、同年ロシア政府に正式採用された。ロシアではT90を最後に主力戦車の大量生産は行われておらず、そのほかの戦車はT90の改造版やアップグレード版だ。

T90は世界市場で最もよく売れている戦車のひとつで、米軍事誌が選んだ世界の戦車トップ10にもランク入りしている。

ウクライナ軍戦車部隊の司令官であるオレクサンドル・ロマンチュク大尉は、ニュースサイト「ユーラシアン・タイムズ」に対して、「だからこそ我々が保有する兵器の質が重要なのだ」と述べた。「T90に対抗するには、ウクライナ軍の戦車3両か、あるいは大きな幸運が必要だ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送-AIが投資家の反応加速、政策伝達への影響不明

ビジネス

米2月総合PMI、1年5カ月ぶり低水準 トランプ政

ワールド

ロシア、ウクライナ復興に凍結資産活用で合意も 和平

ワールド

不法移民3.8万人強制送還、トランプ氏就任から1カ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中