中国「ゼロコロナ放棄」の冷徹さは毛沢東にルーツがある
IS XI “LYING FLAT”?
あくまで共産党を守るため
しかも、結果として再び世界中に新型コロナウイルスを輸出でき、各国に検疫や防疫などで重い負担をかけられる――。中国にとって、こんなにうまい話はない。
だから中国政府は春節(旧正月)に先立って、一般国民の海外渡航を解禁した。思えば3年前もそうだった。この致死的な感染症の発生を知りつつ、すぐには国民(や国内にいた欧米ビジネスマン)の出国を禁じず、ウイルスを国外に拡散させた。
こういう「近隣窮乏化政策」は卑劣すぎると思われるかもしれないが、歴史をひもとけば、それは中国共産党の忌まわしい伝統であることが分かる。
習近平が師と仰ぐ建国の父・毛沢東は1935年、偉大な「長征」(と言っても実は必死の退却だったのだが)で遠くて寒い陝西省延安へ向かう途中、雪深い崑崙(こんろん)山脈を前に有名な詩を作った。題して「念奴嬌・崑崙」。
そこには「崑崙よ、おまえはそんなに高くなくていい、そんなに雪深くなくていい。私は宝剣を抜き、おまえを3つに切り裂こう。1つは欧州に与え、1つは米国に贈り、残る1つは東方の国(毛自身の解説によれば日本のことだ)に戻す。そうすれば世界は平らになり、どこも同じ気温になる」とある。
「寝そべる」どころではない。習はゼロコロナから「ゼロワクチン・ゼロ医療」へと舵を切った。自分の身と中国共産党を守るためだ。それ以外の国は、ご用心を。
練乙錚(リアン・イーゼン)
YIZHENG LIAN
香港生まれ。米ミネソタ大学経済学博士。香港科学技術大学などで教え、1998年香港特別行政区政府の政策顧問に就任するが、民主化運動の支持を理由に解雇。経済紙「信報」編集長を経て2010年から日本に住む。