裁判所まである!中国の非合法「海外警察署」の実態を暴く
XI’S POLICE STATE–IN THE U.S.
ショーンによれば、「デモ隊の仲間のふりをするのは彼らの常套手段」だ。「証拠はないが」と彼女は言う。
「個人的には、中国共産党とつながりのある人物だと思う」
著名な反体制活動家の魏京生(ウエイ・チンション)は昨年5月のある晩、首都ワシントンで車を運転していたとき、故意と思われる交通事故に遭った。前の車が急ブレーキをかけたので自分もブレーキを踏んだところ、後ろの車が猛スピードで突っ込んできたという。
「後ろの車はすぐにバックして逃げた。次いで前の車も姿を消した」
魏は電子メールでそう証言した。
この場合、意図的に衝突したのか否かは不明だ。それでもFBIはこの事故の以前に、中国の工作員と思われる人物が反体制派を標的とした衝突事故の偽装工作をほのめかした電話をキャッチしている。
狙われたのは、ニューヨークから連邦下院議員選への立候補を目指していた牧師で、元米軍兵の熊焱(ション・イエン)。
一昨年の12月、かつて中国国家安全部に属していたリン・チーミンなる人物が、米国内で計画実行のために雇ったと思われる私立探偵に向かって、「交通事故なら(彼は)木っ端みじんだな」と言って笑うのをFBIは録音していた。
中国共産党を批判する人が命を奪われた例もある。昨年の3月14日、ニューヨークの弁護士・李進進(リー・ジンジン、66)がクイーンズ区フラッシングの事務所で殺害された。
李は天安門事件で投獄されたこともある活動家だ。中国側の関与を示す証拠はないが、中国政府系メディアの中華網には「祖国の裏切り者、また1人米国で死亡」という見出しが躍った。
現行犯で逮捕された張暁寧(チャン・シアオニン)は、犯行の約半年前に学生ビザで渡米していた。彼女は血まみれの姿で刃物2本を手に、瀕死の李を見下ろしていたという。
市警109分署から移送される際には、集まっていた中国系アメリカ人たちに向かって「裏切り者!」と叫んでいた。
匿名を条件に本誌の取材に応じた友人たちによると、李とその父親は中国の治安当局で働いていたが、李自身は中国出身者の亡命を助ける活動に転じ、中国の「国境を越えた弾圧」に対抗するため、アメリカの司法当局に協力していたという。
「彼は自分の知識を用いてアメリカ政府に協力し、共産党に対抗していた。でも中国では、組織を裏切った者には必ず高い代償を払わせる」
そう語った李の友人は、報復を恐れて氏名を明かさなかった。