あるミャンマー脱走軍医の告白──酒と麻薬の力を借りて前線に赴く兵士とその残虐性
A GRISLY CONFESSION
脱走する兵士が増えているせいで、国軍の兵力は急速に落ちている。(民主派が樹立した)国民統一政府(NUG)が脱走兵に対し、金銭的・法的支援や安全な場所を提供している。食料などを支給してくれる民間の団体もある。
だが、私たち兵士は軍で人質のような生活を送ってきたし、洗脳もされているから、脱走後の暮らしは大変だ。ここで軍の追っ手やタイ警察に見つかったら、ミャンマーへ連れ戻される懸念もある。
――ミンアウンフラインに会ったことはあるか?
3回ほどある。初めて彼を見たのは、軍医学校の卒業式のときだった。総司令官になる前から、彼の悪名は知られていた。
多くの将校が、陰で彼を「猫のふん」と呼んでいた。一見、人当たりはいいが、実は狡猾な彼の人柄にちなんで付けられたあだ名だ。猫のふんは柔らかいけど、非常に不愉快な臭いがするからだ。彼を初めて見たとき、あだ名どおりの印象を持った。
その後、配属された病院で2回ほど彼に会った。彼が来ると兵士たちは、「業者が仕事を探している」と冗談を言った。病院を訪れると彼はいつも、物資発注や、老朽化した建物の修復、新しいビルの建設をするように指令を出したが、こうした仕事は全て彼の親族が所有する企業が受注したからだ。
彼はさまざまな方法で私腹を肥やしていた。兵士は(共に国軍系の巨大複合企業である)ミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)とミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)の株を無理やり買わされる(両者ともミンアウンフラインを含む国軍幹部が経営に大きな権限を持ち、その利益は軍事作戦などの資金源になっている)。
また、彼が関与する生命保険会社にも強制的に加入させられる。死亡後に家族が給付金を受け取ることは非常に難しいが、誰もそれに文句を言えない。彼が設立した私立病院で、国軍に所属する医療従事者を無償で働かせていたこともある。彼の悪行をあなたに全て伝えたら、本が1冊出版できるだろう。