産官学の連携「神戸モデル」で介護業界に外国人材を 人手不足が深刻な地方のロールモデルに
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4人のベトナム人留学生に講義を行う、神戸国際大学の瀬戸口達也さん(右奥) 写真提供:神戸国際大学
<年々深刻になる日本の介護人材不足。「神戸モデル」は産官学が連携して外国人留学生が安心して来日できる仕組みを整え、介護人材不足の解消を図る新たなプロジェクトだ>
少子高齢化の影響を大きく受けている日本の介護分野。2020年と25年の予測を比べると、15~64歳の生産年齢人口は279万人減る一方で75歳以上の後期高齢者は308万人増える(内閣府「令和3年版高齢社会白書」)。25年、介護人材は38万人不足すると推計されている(厚生労働省「2025年に向けた介護人材にかかる需給推計」)。
新たに始まった「神戸モデル」は市内の介護人材不足を補うため、社会福祉法人報恩会、神戸市、神戸国際大学の三者がスクラムを組んだ産官学連携による外国人介護人材受け入れの取り組みだ。報恩会は日本で働く外国人介護人材向け研修や東南アジアの学生を対象にした介護技術講義を行ってきた実績があり、神戸国際大は約500人の留学生が在籍し、日本語教育や国際交流の盛んな大学。実績のある両者に行政が加わることで、外国人介護人材を迎え入れる仕組みを整え、軌道に乗せることを目指す。
連携が必要となった背景には、一部の仲介機関が高額な費用を徴収し、訪日する人材に重い経済負担をかけているほか、単なる労働者としか見ていないような実態がある。発起人である報恩会の理事長、奥野和年さんは、「志半ばで帰国するケースが後を絶たない現状は、日本にとってもよくないこと。持続可能な仕組みをつくる必要がありました」と説明する。
神戸国際大学の海外の協定校で選抜された学生は基本的に無償で日本に留学でき、特定技能1号(介護)に合格後、提携する市内の介護事業所で就労。来日する学生たちが安心して勉強し働くことができるようさまざまなサポートを充実させている。最終的に働きながら介護福祉士を目指すのは、資格取得とキャリアアップを通じて長く日本で働いてもらうためだ。特定技能ビザの在留資格は通算で最長5年だが、国家資格を取得すれば定年まで働くことができ、家族も帯同できる。「その道筋をつくりたい」と奥野さん。
語学教育もきめ細かだ。たとえば、「移乗(いじょう)」という介護用語がある。移動は利用者の位置を変えること全般を指すが、移乗は利用者をベッドから車椅子などに動かす際に使う。こうした専門用語は、留学中には介護技術研修部分などを担当する報恩会の職員が介護ベッドを使って実演しつつ、丁寧に教えていく。
2022年9月に第1陣となるベトナム人留学生を受け入れた神戸国際大では、日本語教育だけでなく日本の文化や生活習慣に触れるカリキュラムも用意されている。神戸モデルの窓口を務める同大学職員の瀬戸口達也さんは、「働き始めてからギャップを感じることがないよう、社会人としての挨拶や所作に触れる機会もつくっていきたい」と言う。