最新記事

中国

中国「世界最大の移動」春節の感染拡大 100万人以上死亡の懸念

2023年1月17日(火)17時15分
青葉やまと

新型コロナ治療のため点滴を受ける人々(上海、1月9日).....REUTERS-cnsphoto

<「世界最大の移動」が起きる春節、新型コロナ感染が爆発している......>

ゼロコロナ政策を撤廃した中国で、新型コロナウイルスの感染者が急増している。中国政府は大規模な検査および日別の感染者数発表を取りやめており、現状の正確な把握は困難となった。だが、国外のメディアは各省や関係者らによる情報をもとに、厳しい状況を指摘する。

米ワシントン・ポスト紙は1月11日、「中部河南省は、月曜(9日)までに約8900万人の住民が感染したとの予測を示した。各病院の処理能力を上回っているとも述べた」と報じた。

英BBCは省の保健当局による発表をもとに、感染者数を8850万人としている。記事は中国で3番目に人口が多い同省において「住民の9割近く」が感染した計算だと指摘する。

同省の農村で活動する医師の息子は、英ガーディアン紙に対し、「朝から晩まで忙しい」「村には発熱者が非常にたくさんおり、いくつもの家庭に広がっているが、解熱剤の入手は困難だ」と語った。

河南省は古くから交通の要衝であり、鉄道幹線が交差する鄭州駅および鄭州新鄭国際空港が立地するほか、議論を呼んでいる三門峡ダムの所在地としても知られる。

一方、南西部重慶市などの一部自治体は独自に、「(感染のピークを)過ぎたとみられる」と発表している。これに対しワシントン・ポスト紙は、客観的なデータがほとんど提示されていないと述べ、「提示されている根拠は乏しい」と指摘している。

コロナ薬は20倍超の95万円に値上がり 北京では病院職員1000人感染も

医療体制は逼迫している。米CNBCは1月12日、研究機関を併設する大規模病院の北京中医医院において、職員2000人のうちおよそ半数が新型コロナウイルスに感染していると報じた。病院長は記者団に対し、「労働者たちは皆、伝統的な漢方薬を服用し快復した」と説明している。

医薬品も不足している。ワシントン・ポスト紙は中国国営メディアによる報道をもとに、グレーマーケットでの医薬品の取引が活発化していると報じている。ファイザーが製造する経口抗ウイルス薬のパキロビッドパックは、通常1箱約340ドル(約4万3900円)のところ、北京では20倍を超える7400ドル(約95万6000円)で販売されているという。

パキロビッドパックはファイザーとの契約更新が難航したことで、品不足が続いていた。1月9日になって同社は、現地企業に製造ライセンスを供与したと発表している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマーでM7.7の地震、マンダレーで建物倒壊 

ワールド

仏CPI、3月速報前年比+0.9%で横ばい 予想下

ワールド

タイ証券取引所、ミャンマー地震で午後の取引停止

ビジネス

ラピダス社長、民間からの追加出資1000億円「めど
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影された「謎の影」にSNS騒然...気になる正体は?
  • 2
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 3
    地中海は昔、海ではなかった...広大な塩原を「海」にした、たった一度の「大洪水」とは?
  • 4
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    「マンモスの毛」を持つマウスを見よ!絶滅種復活は…
  • 8
    「完全に破壊した」ウクライナ軍参謀本部、戦闘機で…
  • 9
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 10
    老化を遅らせる食事法...細胞を大掃除する「断続的フ…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 3
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 4
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 5
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 8
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 9
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 10
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中