最新記事

台湾有事

台湾防衛の代償──米死傷者1万人、中国1.5万人、日本も多大な犠牲 CSISが24通りのウォーゲームの結果を発表

China Would Lose War With U.S., Simulations Predict

2023年1月12日(木)18時58分
ジョン・フェン

ウォーゲームの結果を見る限り、台湾は中国に併合されずにすみそうだが、敵味方双方が多大な犠牲をまぬがれない。台湾の経済とインフラは壊滅状態となり、大きな損失を出した米軍は世界戦略の見直しを迫られることになる。一方で、侵攻作戦の失敗が中国共産党に及ぼす痛手は予想もつかない。共産党の一党支配の継続も危うくなるだろう。

「短期間の戦闘であることを考慮すると、米空軍はベトナム戦争以降、海軍は第2次大戦以降、最大の損失を出すことになる」と、著者らは指摘する。

最も楽観的な予測と最も悲観的な予測を除いた標準的なシナリオでは、台湾空軍は534機の戦闘機、海軍は38隻の大型艦船を失う。台湾軍の死傷者はおよそ3500人に上り、局地的な陸戦での死者がその3分の1を占める。

米軍の死傷者と行方不明者は1万人近くに上り、ゲームの結果を平均すると、米海軍は空母2隻、駆逐艦や巡洋艦など20隻を失う。空軍の損失は軍用機168〜372機だ。

アメリカと安全保障条約を締結している日本は、在日米軍の基地が中国のミサイル攻撃にあえば、戦闘に参加することになると、著者らはみている。日本の自衛隊は軍用機122機、艦船20数隻を失うことになりそうだ。

撃退に必要な4条件

著者らによると、中国も「酷い損失を被る」という。「海軍はずたずたになり、水陸両用部隊の中核は失われ、何万もの兵士が捕虜となる」中国は軍用機161機、艦船138隻を失う。戦闘による死傷者は7000人に達し、その3分の1は死者だ。それとは別に1万5000人が渡航中に海に落ち、その半数が溺死する。捕虜となる兵士は3万人を超える。

多大な犠牲は避けられないにせよ、米軍主導の防衛軍が侵攻軍を撃退するには4つの条件が不可欠だと、著者らは述べている。台湾が抗戦すること。アメリカが即座に、かつ直接的な介入に踏み切ること。米軍が日本の基地から作戦を展開できること。そして、中国の水陸両用作戦を妨げるために、米軍に対艦ミサイルの備蓄が十分にあること。

台湾軍がやられても、台湾の人々が降伏を拒んで徹底抗戦すれば、中国の占領はせいぜい数カ月程度で終わるだろう。アメリカには台湾を守る法的義務はないが、専門家によれば、中国軍の上層部は米軍の介入を前提として作戦を立案しているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米との鉱物資源協定、週内署名は「絶対ない」=ウクラ

ワールド

ロシア、キーウ攻撃に北朝鮮製ミサイル使用の可能性=

ワールド

トランプ氏「米中が24日朝に会合」、関税巡り 中国

ビジネス

米3月耐久財受注9.2%増、予想上回る 民間航空機
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 2
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考えるのはなぜか
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 5
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    「地球外生命体の最強証拠」? 惑星K2-18bで発見「生…
  • 8
    謎に包まれた7世紀の古戦場...正確な場所を突き止め…
  • 9
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中