太田光インタビュー:「カルト擁護」と言われても......炎上に抗う真意
炎上で気付いた信者の気持ち
太田:大体の宗教は、その宗教を信じていない人々からすればおかしな教義を持っている。だから教義そのものを批判してもしょうがないし、世論が支持しているからといって解散させればいいものではない。論理の部分を詰めないといけないということが、俺のずっと言いたかったこと。宗教法人を解散させるならさせるで、法にのっとってやればいい。
一連の発言の中で、太田には「芸人だからどうせ逆張りしているだけ」「もっと勉強しろ」という声が寄せられた。彼はどう受け止めていたのか。
太田:いや、俺は順張りですよ。テレビで、自分が思ってもないことを言えないんですよ。俺はもともと、視聴者の感覚と合っていると思ったことがないのね。
それでも何か言えば、外から無知だと決め付けられる。それで、炎上騒動の中で「あれ? もしかしたら......」と、自分と今の2世信者、現役信者に起きていることは、ちょっと近いんじゃないと思ったんだよね。あいつは無知だと決め付けられて、説得されるのはやっぱりつらいと思う。
話を聞けば、信者の中には問題は起きていると知っているのに、居場所がそこにしかないから穏やかな信仰を続けている人もいるわけだよ。彼らに「おまえは分かっていない、おまえの親はおかしい」と言ってしまう社会と、俺へのバッシングの根っこにあるのは、どこか同じことじゃないかと考えた。人の心は力ずくでは変えられない。外から決め付けて、変われるほど単純なものではない。
安倍元首相と会った理由
バッシングが広がっていく一因になったのは、安倍晋三元首相が主催していた――そして、公費の私物化と批判された――「桜を見る会」に出席していたことだ。苦笑交じりに語る。
太田:安倍政権を支持していたなんてことはないんだけどね。俺はどんな問題でも、言葉で伝えないといけないと思っているから、安倍さんにも会うよ。俺と安倍さんは、憲法改正(の是非)が日本の大事な課題だと思う点では一致していたから。昔、『太田光の私が総理大臣になったら...秘書田中。』という番組をやっていたときのことを今でも覚えている。憲法問題を取り上げると、如実に視聴率が下がる。その代わり、あの時だったら一番旬のニュースだった「消えた年金」問題なんかを取り上げると、また数字が上がる。
自民党の党是であっても、安倍さんが熱心に取り組みたいと思っていても、俺ももっと語りたいと思っていても、世の中から憲法は注目されてはいない。だから、俺は護憲派として安倍さんに言葉を伝えるし、安倍さんの考えもしっかり聞いた。会わないと話もできないんだよね。
社会はどうして被害者を忘れる?
太田:安倍さんを失った遺族はもう二度と安倍さんと話せない。逮捕された側に同情するのは日本社会の優しさでもあると思うけど、その優しさは突然、身内が亡くなった犯罪被害者遺族にも向けられるのが筋ではないかな。
国葬が決まってから9月27日までの間、(安倍元首相の)遺族に対してどれだけ残酷な言葉が飛び交ったか。もう安倍晋三という政治家、そして安倍長期政権をどう評価するかも議論しなくなってしまった。これだっておかしな話だと思う。