中国「脱ゼロコロナ」が曖昧すぎる最大の理由は、mRNAワクチンの不承認
CHINA’S ZERO-COVID MUDDLE
北京の鉄道駅の近くでマスクを着けてたたずむ人々(12月8日) AP/AFLO
<中国政府はゼロコロナからの脱却を表明したが、規制緩和には一貫性がなく、地方により異なる。公衆衛生が政治の犠牲になっている。このままでは感染が再拡大し、医療システムの崩壊を招くだろう>
中国がデモに揺れている。これだけ大規模で政治的なデモが起きたのは、1989年の天安門事件につながった騒乱以来のことだ。
目下の事態は驚くことではない。中国政府の厳しい「ゼロコロナ政策」には、国民の不満が長いこと高まっていた。それでも習近平(シー・チンピン)国家主席率いる指導部は、デモの高まりを予期していなかった。
この事態を受けて、中国政府はゼロコロナからの脱却を加速させると表明。11月に発表した20項目の緩和策に加え、10項目の追加措置を発表した。
政府は一連の抗議デモに対し、天安門事件のときのような強硬策は控えている。デモの現場に大勢の警察官を配備しているが、正面衝突は避け、携帯電話のデータを追跡して参加者を威嚇する程度だ。
だが共産党指導部は、今後「断固たる取り締まり」を行うとも警告している。
国家安全相の陳文清(チェン・ウエンチン)によれば、当局は今後「敵対勢力による潜入・破壊工作」や「社会秩序を乱す違法・犯罪行為」を取り締まる考えだ。
このように中国政府は、抗議デモへの対応について比較的明確なメッセージを発しているが、ゼロコロナに関しての発信は曖昧で一貫性がない。
規制緩和は始まったが、当初は広州や上海など一部の都市でしか導入されていない(それでも国営メディアからは「ゼロコロナ政策」という言葉が聞かれなくなったようだ)。
不明確な状態が続いているのは、中国政府の高官が誰一人としてゼロコロナ政策の全面的な廃止を公言していないからだ。
彼らがゼロコロナ政策について明確な立場を示さないのは、政治的な理由による。政府は、規制緩和によって感染が再び拡大し、入院者や死亡者が増えた場合に責任を問われたくないと考えている。
地方の当局者も政治的な計算で動いている。公衆衛生に対するリスクより自分が得られる利益のほうが大きいと考える当局者は規制緩和に踏み切る。感染が再拡大すれば自分が損をすることのほうが多いと計算した者は規制を維持している。
だが公衆衛生が政治の犠牲になっている最大の要因は、中国当局が効果の高い欧米のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンを認めていないことだろう。