最新記事

ロシア

プーチンは無責任で厄介なナルシシスト──ロシア治安当局の内部告発

Putin Branded a Narcissist in Leaked FSB Letters

2022年11月28日(月)18時28分
イザベル・ファン・ブリューゲン

幼少期のコンプレックスがそうさせたのだろうと内部告発は言う(10月14日、カザフスタン) Turar Kazangapov-REUTERS

<ロシアの治安機関はプーチンを無責任な自己愛性障害者と見ていることが内部告発者のメールで明らかになった。自分で責任を取りたがらないのは過剰な自己愛の帰結だが、戦争指導者としては危険な資質だ>

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ロシア連邦保安局(FSB)の局内で「ナルシシスト」の烙印を押されていたことが、本誌が入手した内部告発者の電子メールで明らかになった。

3月5日付のこのメールは、「変化の風」と名乗るFSBのエージェントが、腐敗と戦うウェブサイト「Gulagu.net」を運営するロシアの人権活動家で、現在フランスに亡命中のウラジーミル・オセチキンに送ったものだ。その内容から、FSB内の一部の人々がプーチンをどう見ているかがわかる。

このFSBエージェントはオセチキンに定期的に情報を送り、2月24日にプーチンがウクライナ侵攻を命じたことで始まった戦争に対する局内の怒りや不満を明らかにしていた。

ワシントンが本拠地のNPO「変化の風リサーチグループ」のイゴール・スシュコ事務局長は、エージェントからの通信が始まって以来、文面をロシア語から英語に翻訳している。彼はすべてのメールを本誌に提供した。

内部告発者の最初のメールは、3月4日に書かれたもので、FSBに関する専門家クリスト・グロゼフが内容を分析した。グロゼフは3月6日、「FSBの現役および元関係者2人にメールを見せたところ、『同僚が書いたものであることは間違いない』と認めた」と述べた。

FSBが知るプーチンの性格

変化の風と名乗るエージェントは、3月5日のメールで「プーチンとFSBの状況はこうだ」と書き始めた。「一方で、プーチンは支持され、尊敬されているが、少し深く掘り下げると、それはプーチンのイメージに対する集団的感情にすぎない。FSBは現実を知る力があるから、それがわかる」

FSBには「忘れてはならないルールが1つある」があると、このエージェントは述べた。

「プーチンのイメージを批判することは、自分の利益に背くことになる――ほとんどの人にとって、このルールは当然で、疑問の余地のないことと見なされている」

このエージェントによれば、FSBの人間はプーチンと個人的に接触しているわけではないが、もしプーチンをFSBに採用する予定の人材として評価し、「状況プロファイル」を作成するとしたら、4つの重要な見解を示すだろう。

第1に、「事実として自己愛性障害がある。おそらく幼少期のコンプレックスによるもので、それを克服する方法として発症した」

プーチンはこれまで何度もナルシシストのレッテルを貼られたことがある。カーター政権の国家安全保障問題担当大統領顧問だった故ズビグネフ・ブレジンスキーは、プーチンを「ナルシスティックな誇大妄想」と非難し、イランのマフムード・アフマディネジャド元大統領はプーチンを「暴君的ナルシシスト」と呼んだ。ファイナンシャル・タイムズ紙はソチオリンピックを「プーチンのナルシスティックな自己賛辞」と表現した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

上院共和、独自の予算決議案採決へ トランプ氏は下院

ビジネス

ウォルマート、通期売上高は過去最高の見込み 関税の

ビジネス

スズキが新中計、31年3月期に営業利益8000億円

ワールド

トランプ氏、中国主席の訪米予想 時期は明示せず
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「20歳若返る」日常の習慣
  • 4
    1月を最後に「戦場から消えた」北朝鮮兵たち...ロシ…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 7
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 8
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 2
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 8
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 9
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 10
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中