きっかけは閑古鳥が鳴くレゴランド──知事の「徳政令」が引き起こした韓国の信用危機
A Theme Park Crisis
江原道のレゴランド・コリアは開園当初から閑古鳥が鳴いている YONHAPーREUTERS
<自治体のテーマパーク保証問題が優良企業の資金調達に悪影響を与え、国家的信用危機まで始まる。経済を知らない知事のバカ騒動とは?>
アメリカの大統領が就任早々、「浪費家の前大統領時代に発行された米国債については、今後、一切の支払いに応じない」と宣言したら、市場がどんな混乱に陥るか想像してみてほしい。
韓国・江原道の金鎮台(キム・ジンテ)知事は、実質的にそれをやった。それは韓国全体で信用危機を引き起こし、国外にも影響を及ぼしつつある。何もかも避けることができた、不要かつばかげた自滅的判断の結果だ。
この問題が一段とばかばかしく感じられるのは、事の発端がテーマパーク「レゴランド・コリア」の建設計画だったから。
韓国北東部に位置する江原道は山がちで人口も少ない地域だが、2020年以降、中心都市・春川に知名度の高いテーマパークを誘致しようとしてきた。
このため地方自治体である江原道は、特別目的会社・江原道中島開発公社(GJC)を設立。建設資金を調達するため、GJCがコマーシャルペーパー(CP)を発行すると、江原道が2050億ウォンの支払いを保証した。
この一連の決定が下されたのは、崔文洵(チェ・ムンスン)前知事時代のこと。地方自治体の保証付きということもあり、米格付け大手ムーディーズの子会社である韓国信用評価(KIS)は、このCPにA1という最高の格付けを与えた。
実際の建設は、現場から遺跡が発見されたり、賄賂や汚職の疑惑が浮上するなどして何年も遅れたが、レゴランド・コリアはようやく今年5月に開園にこぎ着けた。
ところが、首都ソウルから遠いことや、高すぎる料金設定が響き、レゴランド・コリアの経営は最初から大きくつまずいた。韓国全体の不動産市場の低迷で、CPの担保となっていたパーク所在地の不動産も大幅に下がった。
決定打となったのは、7月に崔に代わって新知事に就任した金の発表だ。CPの初の償還日の前日である9月28日、金はGJCの破産を裁判所に申し立てると宣言した。つまり債権者には1ウォンも支払わないというのだ。