最新記事

韓国

きっかけは閑古鳥が鳴くレゴランド──知事の「徳政令」が引き起こした韓国の信用危機

A Theme Park Crisis

2022年11月24日(木)14時26分
ネーサン・パク(弁護士)
レゴランド・コリア

江原道のレゴランド・コリアは開園当初から閑古鳥が鳴いている YONHAPーREUTERS

<自治体のテーマパーク保証問題が優良企業の資金調達に悪影響を与え、国家的信用危機まで始まる。経済を知らない知事のバカ騒動とは?>

アメリカの大統領が就任早々、「浪費家の前大統領時代に発行された米国債については、今後、一切の支払いに応じない」と宣言したら、市場がどんな混乱に陥るか想像してみてほしい。

韓国・江原道の金鎮台(キム・ジンテ)知事は、実質的にそれをやった。それは韓国全体で信用危機を引き起こし、国外にも影響を及ぼしつつある。何もかも避けることができた、不要かつばかげた自滅的判断の結果だ。

この問題が一段とばかばかしく感じられるのは、事の発端がテーマパーク「レゴランド・コリア」の建設計画だったから。

韓国北東部に位置する江原道は山がちで人口も少ない地域だが、2020年以降、中心都市・春川に知名度の高いテーマパークを誘致しようとしてきた。

このため地方自治体である江原道は、特別目的会社・江原道中島開発公社(GJC)を設立。建設資金を調達するため、GJCがコマーシャルペーパー(CP)を発行すると、江原道が2050億ウォンの支払いを保証した。

この一連の決定が下されたのは、崔文洵(チェ・ムンスン)前知事時代のこと。地方自治体の保証付きということもあり、米格付け大手ムーディーズの子会社である韓国信用評価(KIS)は、このCPにA1という最高の格付けを与えた。

実際の建設は、現場から遺跡が発見されたり、賄賂や汚職の疑惑が浮上するなどして何年も遅れたが、レゴランド・コリアはようやく今年5月に開園にこぎ着けた。

ところが、首都ソウルから遠いことや、高すぎる料金設定が響き、レゴランド・コリアの経営は最初から大きくつまずいた。韓国全体の不動産市場の低迷で、CPの担保となっていたパーク所在地の不動産も大幅に下がった。

決定打となったのは、7月に崔に代わって新知事に就任した金の発表だ。CPの初の償還日の前日である9月28日、金はGJCの破産を裁判所に申し立てると宣言した。つまり債権者には1ウォンも支払わないというのだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

英小売売上高、2月は前月比+1.0 非食品好調で予

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、貿易戦争巡る懸念でも目標達成へ

ワールド

タイ証取、ミャンマー地震で午後の取引停止 31日に

ワールド

ロシア、ウクライナがスジャのガス施設を「事実上破壊
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影された「謎の影」にSNS騒然...気になる正体は?
  • 2
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 3
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 4
    地中海は昔、海ではなかった...広大な塩原を「海」に…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    「完全に破壊した」ウクライナ軍参謀本部、戦闘機で…
  • 9
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 10
    「マンモスの毛」を持つマウスを見よ!絶滅種復活は…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 3
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 4
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 5
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 8
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 9
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 10
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中