中国は「GDPアメリカ超え」を諦め、ゼロコロナを突き進む
XI MISSES THE MARK
迫り来る「中所得国の罠」
ころが2010年に1度の国勢調査で、出生率の低下と労働人口の縮小傾向が明らかになった。
こうなると、経済成長で豊かになる前に国民の高齢化が進んでしまう、いわゆる「中所得国の罠」に陥りかねない。もちろん、それだけは避けたい。
いま中国の人口は14億を超えて世界一だが、今年の出生数は1950年代以降で最も少なかった昨年の1062万人をさらに下回る見通しだ。
また労働年齢人口についても、2020年代の半ばには2014年のピーク時に比べて3500万人ほど減少する見込みとされる。そうなったら深刻な人口の危機で、このままだと中国の生産力は中長期的に押し下げられることになる。
習も党大会の政治報告でこの問題に触れ、中国政府は「出生率を支え、出産や子育て、教育にかかる費用を軽減する政策体系を確立し、人口発展戦略を最適化させていく」と述べている。
中国政府は1979年から厳格な「一人っ子政策」を採用してきたが、2015年末に廃止し、2人目までを容認した。その6年後の2021年5月には3人目も容認する方針に転じたが、わずか2カ月後には全ての産児制限を撤廃した。
そして出産を奨励するため、新たに育児家庭に対する税額控除や住宅助成金などの支給も開始している。
また習は国内統治について中央政府に権限を集中させる政策が目立ち、大きいだけの国有企業を優遇する一方で、民間企業の成長を阻害しているとの指摘がある。
ここ数年は、習のこだわる「ダイナミックなゼロコロナ政策」が民間の中小企業を苦しめ、その生産性を押し下げ、多くの倒産や若年層の失業率悪化を招いているとの批判もある。
「ゼロコロナ」の縛りのために、党大会の始まる1週間前からは中国各地で約2億人が、何らかの行動制限を課されていた。町全体、あるいは地域を限定したロックダウンが実施され、国内外の旅行者に対する強制隔離措置も継続された。
香港では9月に、新型コロナ関連の規制が緩和された。今は香港政庁も中央政府の言いなりだから、香港で規制緩和が始まったなら本土の各地でも規制が緩和されるのではないかという淡い期待も浮上したが、そうはならなかった。
何しろ、「ゼロコロナ」には習のメンツが懸かっている。だから新規感染をゼロに抑えるという政策には完全な成功が求められ、妥協の余地はない。つまり、この政策は今後も続く。そのことは、習も政治報告で明確にしている。