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カタールW杯

W杯開催カタールの「北朝鮮コネクション」

Qatari-Kim Connection

2022年11月21日(月)18時15分
アンソニー・ルジェロ(民主主義防衛財団上級研究員)、グレッグ・スカルラティウ(北朝鮮人権委員会事務総長)

国連安保理は2017年、北朝鮮の核・ミサイル開発の資金源を断つための制裁決議を採択。その一環として、2019年12月22日までに自国にいる北朝鮮の労働者・監督者を送還することを、各国に義務付けた。

この点で、カタールは大きな違反はしていない。国連安保理への報告書によれば、同国で働く北朝鮮人は昨年1月までにゼロになった。

だが残念なことに、制裁は成功とは言い切れない。中国とロシアが当初の賛同にもかかわらず、取り決めを無視していることが大きな原因だ。

米国務省が7月に発表した「2022年人身取引報告書」によると、中国には今も、北朝鮮人労働者推定2万~10万人が公式命令で派遣されている。ロシアや中国の人権状況を考えれば、北朝鮮の搾取体制の存続に、両国が加担するのも不思議ではない。

4年前のW杯ロシア大会決勝戦は世界各地で35億人以上が視聴した。アメリカや同盟国は、今回のW杯を北朝鮮政府の犯罪行為と北朝鮮国民が強いられる苛酷な現実に対して、国際社会の注目を集める機会として活用すべきだ。

北朝鮮の人々の生活に確かな変化を生み出すことは可能だ。私たちは、もう一刻も無駄にしてはならない。

From Foreign Policy Magazine

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