「裏庭ほどの距離」地球に最も近いブラックホールが見つかる
4年間の研究が実を結ぶ
これまで博士たちチームは、4年間をかけて膨大なデータを分析し、同様の手法で休眠型ブラックホールの検出に挑んできた。ブラックホールと思しき天体を検出したことは数度あったが、いずれも詳細な調査により誤りだと判明している。
発見を論文にまとめたハーバード・スミソニアン天体物理学センターのカリーム・エル=バドリー博士は、「このような連星系を発見したとの報告は多数ありましたが、多くはその後の調査によって誤りだと判明しています」と説明している。
今回は長年の調査が身を結んだ初の例となるようだ。「私たちの銀河において太陽のような星が(代表的なブラックホールの形態である)恒星質量ブラックホールを広い軌道で周回しているのが疑いの余地なく検出されたのは、今回が初の事例となります」と博士は胸を張る。
既存の天体進化モデルに疑問を投げかける
今回の研究によって、天体の進化に関する新たな理論構築が促進されるかもしれない。科学ウェブサイトの「Phys.org」は、「ブラックホールは宇宙で最も極端な天体である」と述べたうえで、ブラックホールを含む連星系の進化を研究するうえで本研究が役立つとみる。
宇宙関係のニュースを扱う「Space.com」は、ブラックホールが進化の過程で他方の恒星を呑み込んでしまう可能性が大きかったと指摘している。記事はまた、「連星系の進化を説明する現在の天文学モデルでは、ガイアBH1系の特異な構成がどう成立したかを説明するのに無理を生じている」とし、新たな理論構築のヒントになるとの期待を示している。
NSF天文学研究所の推計によると私たちの地球がある天の川銀河には、恒星質量ブラックホールだけで約1億個が存在するという。だが、これまで発見されたブラックホールの多くは活動型だ。
今回の発見は地球に最も近いという点で新奇性があるだけでなく、休眠型ブラックホールの発見に至ったという意味でも貴重な研究となっているようだ。