トランプが次期大統領になったら「本当に常軌を逸したことが始まる」 人事、軍掌握、対ロシア
IF HE WINS AGAIN
黒人、性的少数者、アメリカ先住民などの投票権をますます制約しようとすることも予想できる。政治的な敵対勢力に嫌がらせをしたり、ひどい場合は投獄したりするために、FBIや軍、内国歳入庁(IRS)などを利用することもあり得る。
対外政策も根本から変わりそうだ。ヨーロッパの同盟国に敵対的な態度を取り、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領との友好関係を復活させるだろう。
一方、大統領を3期以上務めることを禁止する合衆国憲法のルールなど、アメリカの民主政治の骨格を成す規範も崩壊しかねない。
ひとことで言えば、1期目でおなじみのトランプが帰ってくる。ただし、前回より行動がエスカレートし、しかも好き勝手に振る舞うことを妨げる要素は少なくなる。
「1期目が常軌を逸していたと思っているかもしれないが、本当に常軌を逸したことが始まるのはこれからだ」と、反トランプ派の共和党員らが結成した政治団体「リンカーン・プロジェクト」の共同設立者であるリード・ゲーレンは言う。
トランプ派で固める人事
大統領に返り咲いたトランプが最初に行うことは、自分と家族、重要な友人や支持者のあらゆる犯罪について、恩赦を与えることかもしれない。
既に、昨年の連邦議会襲撃事件に加わった人たちに恩赦を与える意向を示している。破壊的な行動や、暴力的な抗議活動、反乱行為を免責することにより、自身の支持層を喜ばせようとする可能性もある。
大統領による恩赦の対象になるのは、連邦法上の刑事事件だけ。州法上の事件は対象外だ。しかし、連邦最高裁判所は、大統領在任中、トランプに対する州法関連の事件と民事事件の裁判を停止しそうだ。「大統領であり続ける限り、法律上の問題からはほぼ完全に守られる」と、サザンアイダホ短期大学のラス・トレメイン名誉准教授(歴史学)は言う。
差し当たり法的脅威を払いのけることができれば、トランプは政府のさまざまなポストを自分のシンパで埋め尽くそうとするだろう。
トランプが1期目で学んだ教訓の1つは、政治的な考え方や経験や能力よりも、自分に対する忠誠心を重視して人事を行うべきだという点だったと、ジョージ・ワシントン大学政治経営大学院のトッド・ベルト教授は指摘する。
1期目の政権では、トランプのとりわけ問題のある行動に歯止めをかけようと努めた人たちもいたが、「そうした高官は少なくなるだろう」と言う。