「エキサイティングな発見だ!」天の川の背後には58個もの別の銀河が眠っていた...
12年間かけて撮影された234枚の写真をつなぎ合わせた圧倒的な天の川(一部) PHOTO:(C) J-P METSAVAINIO
<天の川付近の夜空は明るすぎるため、これまで観測が難しいとされてきた。今回、南米の研究チームが複数の銀河が存在するとの確証を得たという......>
夜空にきらめく天の川の背後には、58個もの別の銀河が息づいているようだ。分光赤方偏移と呼ばれる観測技法により、南米の研究チームがその存在を解き明かした。
天の川付近の夜空は明るすぎるため、これまで観測が難しいとされてきた。今回チームは、チリのジェミニ南望遠鏡に装備されているFLAMINGOS-2と呼ばれる近赤外線観測装置を使い、さらに分光赤方偏移と呼ばれる技法を活用することで、複数の銀河が存在するとの確証を得たという。
研究はアルゼンチン国立サンフアン大学のダニエラ・ガルデアノ氏(天文学)が主導し、査読前の論文として現在、プレプリント保管サービスのarXiv上で公開されている。査読を経て、天文学ジャーナル『アストロノミー&アストロフィジックス』に掲載される見込みだ。
論文によると天の川の向こう側には、少なくとも約30億光年離れた5つの銀河が存在するという。今後さらなる調査が必要なものも含めると、計58個の銀河が天の川の向こう側に眠っているとチームは考えている。
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夜空のおよそ10%は研究が進んでいない
天文学が進展した現在でさえ、夜空のおよそ10〜20%の領域についてはほかの領域ほど研究が進んでこなかった。この領域は天の川を中心とした「銀河面吸収帯」と呼ばれる特殊な領域だ。
地球は天の川銀河の一部だが、とくに地球から見て天の川銀河の中心方向の夜空は星間物質が密集しすぎており、観測が難しい。ちょうど夜空に天の川として輝いている領域だ。この周辺には銀河系の盤面上の星間物質が多く存在し、背後にあるはずの銀河系外の天体を観測することが困難となっている。
科学ニュースサイトのPhys.orgは、「科学者として打てる手が限られることから、この領域はあまりよく研究されてこなかった。したがってその背後に何が隠されているかも、ほとんど知られていない」と説明している。
宇宙の膨張を利用して距離を推定
そこでチームは可視光線に頼るのではなく、近赤外線観測装置を用いた観測を行った。さらに、複数の研究機関がこれまでにVVVサーベイと呼ばれるプロジェクトで収集してきた、膨大な量の赤外線放射データを分析している。赤外線は可視光線よりも銀河面吸収帯を透過しやすい特性があるため、その背後に潜む構造物の把握に有効だ。
これらデータをもとに、分光赤方偏移と呼ばれる手法が実施された。この方法では、測光データから得られたスペクトルエネルギーの分布をもとに、赤方偏移の大きさを推定する。遠方にある複数の銀河を分析するうえでよく活用される方法であり、結果としてその銀河までの距離を得ることができる。
原理として、非常に遠方にある天体から発せられた光は、地球に届くまでに宇宙の膨張の影響を受ける。これにより距離に応じたドップラー効果を生じ、波長が低周波側(赤方側)に偏移する。したがって、赤方偏移によって波長がどれほどずれたかが判明すれば、当該の天体との距離を逆算することが可能だ。
チームはこうした手法を用い、結果として銀河面吸収帯の後方に位置する複数の構造物と地球までの距離を一挙に取得することに成功した。