東京にもある、中国警察の「派出所」は何をやっているのか?
イギリスの中国総領事館で暴行されたデモ参加者も標的?(10月16日) MATTHEW LEUNGーTHE CHASER NEWSーHANDOUTーREUTERS
<欧州26都市、北南米6都市、アジア5都市で中国警察が展開する「海外110」により、今年7月までに約23万人の在外中国人が「帰国の説得」に応じているという。人権侵害と国際法違反の「派出所」の狙いとは?>
スペインを拠点とする人権団体セーフガード・ディフェンダーズは9月に発表した報告書「海外110番」で、中国警察当局が世界各地に「派出所」を開設していると指摘した。
これまで30カ国の42都市に計54カ所を設けているという(報告書タイトルの「110番」は中国で警察に通報する際の電話番号)。
福建省福州と浙江省青田県の公安局が設置したこれらの派出所は、国境を越えた犯罪、特にオンライン詐欺を取り締まるという名目で開設された。
報告書は、中国警察当局の手法に問題があると指摘する。当局が標的にした在外中国人が「帰国の説得」に応じたという体裁を取り繕い、中国で法の裁きを受けるよう仕向けているという。
その過程で、標的の人物が帰国しなければ母国の子供たちから教育の機会を奪うとか、「連座制」の名目で家族や親族を処罰するなどと告げて、家族側から本人に帰国を「説得」するよう誘導している。
こうした方法によって昨年4月から今年7月までの短い期間に実に約23万人の在外中国人が「帰国の説得」に応じたと、中国当局が公表した。彼らは中国で処罰の対象になったと、報告書は述べている。
報告書によると派出所は、北米ではニューヨークに1カ所、トロント(カナダ)に3カ所。南米では、リオデジャネイロ(ブラジル)やブエノスアイレス(アルゼンチン)など6都市に設置されている。
地域別で最も多いのは欧州で、16カ国の26都市。なかでもスペインが4都市・9カ所で最多だ。アジアでは、東京やウランバートル(モンゴル)など5都市にある。
報告書によれば、これらの数字は福州と青田県の警察当局との関連が確認されたものだけ。実際には、中国の他の主要都市の警察と関係している派出所が数多く設置されている可能性があるという。
さらに報告書によれば、派出所は運転免許証の更新などの行政サービスを行うという理由で、在外中国人コミュニティーに組み込まれている場合も多い。