ロシアの大規模ミサイル攻撃には、西側の防空システムも役に立たない?
Western Air Defense Systems Have Limited Effect on Putin's Mass Strikes
爆風で破壊されたキーウ中心部のオフィスビル(10月10日) Vladyslav Musiienko-REUTERS
<ウクライナ全土に降り注ぐミサイル攻撃を前に、米独など西側諸国はウクライナに最新鋭防空システムの供与を急ぐが、効果は限られると専門家>
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が10月10日、ウクライナ全土に放ったミサイル攻撃は、ウクライナの防空システムの弱点を露呈させた。ウクライナを支援する西側諸国は、より高度な軍事技術を届ける必要に迫られている。だが、たとえそうした支援が実現したとしても、ロシアの攻撃からウクライナを守る効果には限界がありそうだ。
ドイツ政府は10日、供与が決まっていた4つの防空システムのうちの1つを数日内に前倒しで提供すると発表した。同時に他の国々に対しても、「キーウをはじめとする多くの都市への新たなミサイル攻撃は、ウクライナに防空システムをいち早く提供することの必要性を浮き彫りにした」と呼びかけた。これは、ウクライナの国防相ならびに欧州委員会が最近になって指摘していた点でもある。
しかし、今回のロシアによる攻撃が広範囲にわたり、またエネルギー関連拠点を標的にしていることを考えると、西側支援の効果には限界があるかもしれない。
冬を前にエネルギー設備を攻撃
ノースウェスタン大学の政治学部教授で学部長を務めるウィリアム・レノは本誌の取材に対して、「西側が提供する防空システムは、ウクライナにとって多少の助けにはなるが、戦術的な効果は限定されたものになるだろう」と述べた。
「ロシア側の声明によれば、この24時間に実施されたミサイル攻撃は、水道と電気のインフラを標的にしたものだった」とレノは述べる。「たとえミサイルがこれらの標的に命中するとしても、あるいはそれ以外の場所に着弾するとしても、(防空システムの)戦術的な効果は限定的なものだろう」
数十発のミサイル攻撃がおこなわれた10日の攻撃では、ウクライナの複数都市で、電力や水道の供給が断たれる事態となった。厳しいものになると予想される冬を前に、ロシアはウクライナのエネルギー施設を脅かしている。当局者によれば、少なくとも15の地域で、部分的に電気の供給が断たれたという。
ロシアが10日におこなった攻撃により、アメリカのバイデン政権に対しても、11月末にウクライナに供与する予定だった高性能地対空ミサイルNASAMSの引き渡しを早めるよう、圧力がかかる可能性が高い。