上野動物園のもう一つの使命 30年以上続く「ズーストック計画」とは?
絶滅のおそれのある野生動物や植物を、動物園など人間の管理下で繁殖させて、野生の個体群に万が一のことがあった時に再導入が可能となるように、遺伝的多様性などを考慮して保持することで絶滅を回避することを「生息域外保全」と呼ぶ。上野動物園ではライチョウ(生息地:北アルプスおよび南アルプスなどの高山地帯)やルリカケス(生息地:奄美大島など)といった鳥類を保護し、人工繁殖して元の生息地域に戻すほか、小笠原諸島の固有種、アカガシラカラスバトや、陸産貝類のアナカタマイマイの繁殖も進めている。「東京から約1000キロメートル南にある小笠原諸島には固有種が多く、世界から注目されています。しかしながら年々激しくなる台風の影響などを受け、絶滅する種もあるようです。そんな危機的状況にあって動物園が果たす役割はますます大きくなるのではないでしょうか」
現在、日本の動物園では野生で捕獲した動物を輸入することなく、園内で暮らしている個体を増やし、持続させていく方向にある。園内の生き物を増やすに当たっては、本来の生態を守りながら動物にとってできる限り幸せな環境を優先して飼育することが大切、と大橋さんは言う。多様な動物の営みを守り、その豊かさや尊さを伝える、まさに大都会のオアシスなのだ。
東京都恩賜上野動物園
東京都台東区上野公園9-83
www.tokyo-zoo.net/zoo/ueno/
取材・文/久保寺潤子
写真提供/公益財団法人東京動物園協会