最新記事

東南アジア

タイ憲法裁、プラユット首相の続投認める 任期の起算点問題は解決するも抗議の声は収まらず

2022年10月3日(月)17時07分
大塚智彦
タイのプラユット首相

首相に復帰したプラユット首相  CHAIWAT SUBPRASOM / REUTERS

<任期問題は解決するも、政情安定化は望めず?>

タイの憲法裁判所は9月30日、憲法の規定に基づくプラユット首相の任期に関して続投を認める判断を下した。これにより一時的に首相職を退き、兼務していた国防相の任務にだけ就いていたプラユット氏が首相職に復帰することが確定した。

この期間首相代行を務めたプラウィット副首相は代行を解かれることになる。

プラユット首相としての任期に関して野党「タイ貢献党」などからは憲法で規定された「最長でも8年」という規定を盾に2014年5月のクーデターでインラック政権を倒し、同年8月24日に暫定首相に就任した時を任期の起算点として2022年8月末が任期切れであると主張。

このため野党側などは憲法裁に判断を求める訴えを起こし、これを受けて憲法裁は8月24日に「プラユット首相の首相としての職務の一時停止」を命じたのだった。

プラユット首相は憲法裁の判断を待つとして首相職を一時的にプラウィット副首相に譲って判断を待っていた。

首相任期の起算点、3通りの解釈

今回問題となった首相の任期8年の起算点には野党側の主張、与党側の認識とさらに別の解釈まで3つの考え方が存在し、混乱に輪をかけた状態だった。

プラユット首相は2014年5月に起こしたクーデターで政権を掌握し、同年8月に暫定首相に就任した。野党などはこの時点が首相任期の起算点だとしている。

これに対し与党「国民国家の力党」などは正式にプラユット氏が首相に正式に就任した2019年6月を起算点とする解釈で、プラユット首相の任期は2027年まであるとしていた。

また、クーデターで実権を握ったプラユット首相は2017年にそれまでの2007年制定の憲法を廃止して「首相任期最長8年」を盛り込んだ新憲法を2017年4月7日に施行している。この新憲法施行を起算点とする解釈もあり、これによれば2025年までプラユット首相の任期は延びることになる。

そして今回、憲法裁はこの3つの解釈から新憲法施行の2017年を任期の起算点とする判断。野党の主張を退けた。このためプラユット首相の任期が2025年までであることが確定したことになった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中