最新記事

ウクライナ戦争

ロシア戦闘機が非武装イギリス機に「ミサイル発射」の衝撃度...NATOとの対立強まるなか

Russian Fighter Jet 'Released Missile' While Following U.K. Spy Plane

2022年10月22日(土)11時52分
ブレンダン・コール
スホイ27(SU-27)

スホイ27(SU-27) Maxim Zmeyev-Reuters

<国際空域をパトロール中の英偵察機を追跡したロシア機がミサイルを発射。ロシアは誤作動を主張するが、緊張が高まるなかで偶発的な衝突も懸念される>

イギリスのベン・ウォレス国防相が10月20日、ロシアの戦闘機が9月に、英偵察機を追跡中にミサイルを発射したと明らかにした。この出来事が起きたのは、クリミア半島がある黒海の国際空域でのこと。Twitterのアカウント「Air and Sea Intel」は、その飛行経路を示したマップを投稿している。

■【画像】ロシア戦闘機に追跡され、ミサイル発射された英偵察機の飛行ルート

ウォレスは議会で、ロシアの戦闘機「スホイ27(SU-27)」2機が9月29日、国際空域で英偵察機「RC-135リベットジョイント」の後を追っていた際にミサイルを発射したと発表した。「航空機が後をつけられるのは珍しいことではなく、この日もそうだった」とウォレスは述べた。だがその後、ロシア機の1機が「リベットジョイントの近くでミサイルを発射した」と明かした。

航空機が対峙したのは90分程度で、「パトロールが終了し、航空機は基地に帰還した」という。ウォレスによると、リベットジョイントのパトロールはこの出来事の後で一時停止された。ロシア側は今月10日、調査の結果、ミサイルが発射された原因は「技術的な誤作動」だとイギリスに伝えたという。

英メディアは、ロシア政府が、今回の件が国際空域で起きたことを認めたと報じた。

Twitterのアカウント「Air and Sea Intel」は、リベットジョイントの飛行経路がウクライナ南部上空と黒海の一部を通過している映像を投稿した。黒海は、ロシアとウクライナの両岸に位置し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領による侵攻が始まって以来、戦闘の舞台となっている。

対立のエスカレーションを避ける重要性

ウォレスによれば、今回の件は同盟国に詳細が伝えられ、パトロールは再開されたが、現在ではリベットジョイントには、戦闘機の護衛が付いているという。

「我々の行動はすべて、この地域で進行中の紛争に関し、国際法に従って調整されていると見なされている」とウォレスは説明。「今回の件は国際空域で起きたとロシアが認識していることを歓迎する。イギリスは2019年以来、黒海上の国際空域でリベットジョイントを定期的に出撃させており、今後も継続する」と述べた。

野党・労働党の影の国防相であるルーク・ポラードは、今回の件は「イギリスのウクライナへの団結した支援を継続しながら、エスカレーションと判断ミスを避けることの重要性について重大な注意を喚起するものだ」と述べた。

ロシアとNATOとの間の緊張は高まっており、プーチンによるウクライナ侵攻が欧州大陸全体に広がることが懸念されている。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、国の全発電所の3分の1が攻撃され、2月以降初めて全国で電力使用を制限したと述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 初の実

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁

ビジネス

大手IT企業のデジタル決済サービス監督へ、米当局が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中