最新記事

韓国

韓国、政府も依存するカカオトークのサーバーが火災で停止、LINE利用者が急増している背景とは?

2022年10月24日(月)15時56分
佐々木和義

韓国でカカオトークのアクティブユーザーは人口の92%に相当する4750万人に達している...... REUTERS/Thomas White

<韓国で人口の92%に相当する4750万人が利用するカカオトーク。そのカカオのサーバがダウンして、LINE利用者が急増した......>

韓国のモバイルアプリ市場で10月16日、日本発のメッセンジャーアプリ「LINE」がダウンロード数1位を記録した。

LINEは日本では人口の70%に相当する8900万人が使っているが、韓国で1か月に1回以上使っている人は18%に過ぎず、日常的に使っている人は1%程度にとどまっていた。

一方、カカオトークのアクティブユーザーは人口の92%に相当する4750万人に達している。そのカカオのサーバがダウンして、LINE利用者が増えたのだ。

多くの企業や公共機関もカカオトークに依存

2022年10月15日午後3時19分、京畿道城南市にあるSK C&Cデータセンター地下3階の電気室で火災が発生した。同データセンターは同33分頃、安全上の理由から電源を遮断して、サーバを借りているカカオやネイバーの主要サービスが停止した。

ネイバーは4時間後に復旧したが、カカオの主要サービスが復旧したのは火災から30時間以上経過した16日午後10時頃だった。

あるユーザーは「カカオがないと友人との連絡が途絶え、バス停を探せず、タクシーに乗ることもできない。スマートフォンなしで生きられないのではなく、カカオなしでは生きられない」とツイッターに投稿した。また、別のユーザーは「ここは韓国か、カカオ国か」と投稿した。

カカオトークは2010年にサービスを開始したメッセンジャーで、韓国では個人はもちろん、多くの企業や公共機関が依存している。仕事の打ち合わせや業務資料のやり取りで利用する人も少なくない。

行政サービスもカカオトークを利用している。最近、筆者が受け取ったメッセージだけでも、銀行、カード会社、保険会社、郵便局、国民健康保険公団、都市ガス、ソウル市と多岐にわたる。ソウルで都市ガスを供給するエスコ(YESCO)は紙の請求書や領収書を廃止して、カカオトークとテキストメッセージに切り替えた。

今年6月時点で、政府機関8か所、自治体285か所、公共機関47か所などが請求書や案内文をテキストメッセージやカカオトークなどで送ったという。

平日だったら経済活動にも多大な影響を及ぼした

スマートフォンの地図はカカオマップ利用者が圧倒的に多く、筆者はカカオマップとグーグルマップを併用しているが、カカオマップの推奨ルートは混雑する一方、カカオマップに掲載されない移動ルートは空いていることがたびたびある。

アプリからタクシーを呼ぶカカオタクシーも普及しており、韓国のタクシードライバー25万人中、23万人がカカオに登録しているという。

カカオバンクの8月末の利用者は1290万人でカカオペイも460万人だ。カカオバンクとカカオペイに頼って財布を持ち歩かない人がいるなど、カカオがないと社会生活が難しいほど普及している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独小売売上高指数、12月前月比-1.6% 予想外の

ワールド

トランプ氏の米国版「アイアンドーム」構想、ロシアが

ビジネス

ECB政策金利、春か夏にも中立金利に=フィンランド

ビジネス

ユーロ圏製造業、米関税より中国製品流入を警戒=EC
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 9
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 10
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中