最新記事

軍事支援

「汚職大国」ウクライナに供与された支援金と武器、無駄遣いで「消失」する危険

ARMING UKRAINE

2022年9月29日(木)18時12分
トム・オコナー(米国版シニアライター)

221004p42_UBK_04.jpg

5月にハルキウ(ハリコフ)の前線を訪れたゼレンスキー UKRAINIAN PRESIDENTIAL PRESS SERVICEーHANDOUTーREUTERS

CSISのキャンシアンが心配するのは、腐敗の可能性や具体的な事例が、超党派で進められてきたウクライナ支援に悪影響を与えることだ。

「腐敗の実例が明らかになれば、超党派の合意に水を差すだろう」とキャンシアンは言う。「そんなことになれば深刻な影響が出る。ウクライナはアメリカとNATOからの長期にわたる高度な支援を必要としているのだから」

アフガニスタンとウクライナでは状況があまりにも違うとしながら、キャンシアンも特別査察官事務所の設置は支援の無駄遣いや不正使用の防止に役立つと考える。ただしアフガニスタンでは、SIGARの警告に耳を傾ける人はほとんどいなかったのも確かだ。

支援がなければ我々の政権は崩壊する

「アフガニスタンではどの司令官も腐敗の問題は遺憾だと言っていた」とキャンシアンは語る。「だが結局は、『支援を削減すればわれわれ(の政権)は崩壊する。支援は続けてもらわなければ困る』と言うばかりだった。ウクライナも同じような傾向にあるのかもしれない」

これまでのところ、高価なハイテク兵器の支援を求めるウクライナ政府の訴えは功を奏している。アメリカ政府は高機動ロケット砲システム(HIMARS)などの最先端の武器を供与してきた。

だが支援の増加に比例して、リスクも増えている。懸念される点は大きく分けて2つ。1つはアメリカから供与された武器がウクライナ軍ではなく、アメリカと敵対する第三者の手に渡る可能性だ。「武器に関するリスクとは、横流しの可能性だ」とキャンシアンは言う。「ジャベリンや対戦車兵器、スティンガーミサイルの一部が、ウクライナにいる誰かが第三者に横流ししたせいで、渡ってはならない勢力の手に渡ってしまうかもしれない」

第2のリスクは、アメリカが供与した兵器や武器によって民間人の犠牲が出てしまう可能性だ。侵攻開始以降、ロシアとウクライナは互いに相手の残虐行為を非難しているが、キャンシアンは「ロシア人に対してではなくウクライナ人、特にロシア語を話す人々に対して」アメリカの武器が使われるシナリオを懸念する。

ロシアが占領しているウクライナの東部や南部では、住民の多くをロシア語話者が占めている。そしてロシア政府の言う「戦争の大義」には、ウクライナ国内のロシア語話者の防衛も重点項目として掲げられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独メルク、米バイオのスプリングワークス買収 39億

ワールド

直接交渉の意向はウクライナが示すべき、ロシア報道官

ワールド

トランプ氏へのヒスパニック系支持に陰り、経済や移民

ワールド

イスラエル軍、ラファに収容所建設か がれき撤去し整
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドローン攻撃」、逃げ惑う従業員たち...映像公開
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 7
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 8
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中