予備役動員でプーチンが反故にした「戦争の条件」
Putin's Speech Abandons Years-Long Political Strategy
ロシア軍の指導層は、招集されるのは予備役30万人程度にすぎないと述べている。しかし米シンクタンク・戦争研究所の推定ではロシアの徴兵対象者はざっと200万人に上り、理屈の上では今度の大統領令でその全員が動員できることになる。ただし、彼らの中には本格的な軍事訓練を受けた者や実戦経験がある者はほとんどいない。
ロシアでは徴兵で常時最大10万人の男性が1年間の兵役に就いているが、職業軍人を目指す者はごくわずかだ。西側の報道によれば、ウクライナ侵攻後ロシアは新兵募集を大々的に行なっているものの、結果は振るわず、やむなく病気や負傷のため野戦病院などで治療中の兵士を再び前線に送り出しているという。
軍事作戦は国民に影響を与えないように行うこと──それが「就任初期に打ち出した、プーチンの元々の政治哲学の柱の1つだった」と、ロシア政府寄りの政治アナリスト、セルゲイ・マルコフはこの夏ニューヨーク・タイムズに語った。「(ウクライナに対する)特別軍事作戦も、理想的には国民に気づかれないように行うべきで、国民生活にほとんど影響を与えないはずだった」
だが現実はそう甘くなかった。
予備役の国外脱出を防ぐ?
プーチンのテレビ演説後まもなく、ロシアから国外に向かう多くの航空便が運航中止になった。オランダの首都アムステルダムに拠点を置くロシアの独立系オンラインメディア、モスクワ・タイムズの21日の報道によれば、徴兵対象者の国外脱出を防ぐための措置ではないかと噂されているという。さらに、当局の厳しい弾圧にもかかわらず、はロシア各地で大統領令に抗議する集会が行われた。
A crowd gathered this evening on Arbat, Moscow's main pedestrian street, shouts "Send Putin to the trenches!" pic.twitter.com/pkm8vynnxw
— Francis Scarr (@francis_scarr) September 21, 2022
Protests in Moscow and St Petersburg today have grown pretty large. People chanting "No to War!" Dozens of arrests reported pic.twitter.com/9F4E5VIy9E
— Matthew Luxmoore (@mjluxmoore) September 21, 2022
「プーチンのために死ぬ必要はない」と、ロシアの反戦組織「ビスナ青年民主運動」は21日に声明を出した。「君は君を愛する人々のためにロシアで必要とされている。当局にとっては、君はただの使い捨ての兵士にすぎない。(招集に応じれば)何の大義も目的もなしに、無駄死にするだけだ」
ロシアの人権派調査機関・OVD-infoによると、21日夕方までに反戦を訴えて逮捕された市民が全土で1200人近く確認されたという。抗議運動の広がりに伴い、今後はるかに多くの逮捕者が出るとみられる。