欧米の金融機関、進まぬ出社再開 オフィスワークの魅力向上にあの手この手
欧米の金融機関では、コロナ禍で在宅勤務が当たり前になった従業員に出社を促している。ロンドンの金融地区で5月撮影(2022年 ロイター/Hannah McKay)
欧米の金融機関では、コロナ禍で在宅勤務が当たり前になった従業員に出社を促している。だが、通勤の負担などが足かせとなり、職場復帰は遅れぎみだ。打開策として金融機関は無料で食事を提供したり、卓球台や「瞑想的な空間」を備えたりと、オフィスの魅力向上に躍起となっている。
金融業界では新型コロナウイルスのパンデミック期に、在宅勤務と出社を組み合わせるハイブリッド勤務が広がった。しかし、ロイターが収集したデータや金融機関幹部とのインタビューから、世界的に従業員の出社比率が見通しに届いていないことが分かった。
通勤費が懐に入るのが普通になった従業員は、燃料費や食費などの負担急増でますます出社に消極的になり、企業はオフィスワークの魅力向上という課題を抱えている。
非営利団体「パートナーシップ・フォー・ニューヨークシティ」のキャサリン・ワイルデ最高責任者(CEO)は「雇用主はオフィスをより魅力的で意義深いものにするため、かなりの手段を講じている」と述べた。食事の無料提供から共有スペースに卓球台を備えて充実させるなど、さまざまな福利厚生策が導入されているという。
コンサルタント会社、アドバンスト・ワークプレース・アソシエーツ(AWA)が8万人近くを対象に世界規模で実施した調査からは、従業員がハイブリッド勤務の決まりを守っていない様子が浮かび上がった。
調査結果によると、義務づけられた出社日数が「2日」、「2日か3日」、「3日」の場合について調べたところ、実際の出社日数はそれぞれ1.1日、1.6日、2.1日だった。
AWAのマネジングディレクター、アンドルー・マーソン氏は「ロックダウンが解除になり制限が緩和されて、人々はオフィスに行こうとした。実際に出社すると仕事はズーム会議への参加だけだった」と話す。「人々が出社しないのは、自分にぴったりのライフスタイルとコスト構造に慣れてしまったからだ」という。
オフィスのホテル化
金融業界の若手従業員はリモートワークがキャリアアップに与える影響を懸念しているが、求職者はリモートワークを希望している場合が少なくない。
柔軟な働き方を希望した上で仕事を検索できるオンラインプラットフォーム、フレクサの広報担当者によると、8月に入ってからは金融関連で職探しする人で「リモート」もしくは「リモートファースト」の仕事を希望する人は全体の80%に達し、3月から33%増加した。