最新記事

ロシア

プーチン政権「ゴルバチョフ氏、冷戦終結に貢献も西側への歩み寄りは誤り」

2022年9月1日(木)09時23分
プーチンとゴルバチョフ

ロシア大統領府は、前日に死去したゴルバチョフ元ソ連大統領を冷戦終結に貢献した非凡な国際政治家として称える一方、「血に飢えた」西側との和解を目指したことは大きな誤りだったとの見解を示した。写真は2004年、ドイツのシュレスビヒで撮影(2022年 ロイター/Christian Charisius)

ロシア大統領府は31日、前日に死去したゴルバチョフソ連大統領を冷戦終結に貢献した非凡な国際政治家として称える一方、「血に飢えた」西側との和解を目指したことは大きな誤りだったとの見解を示した。

91歳で死去したゴルバチョフ氏は1985年にソ連共産党書記長に就任。「ペレストロイカ(改革)」や「グラスノスチ(情報公開)」政策でソ連の政治、経済の改革を断行した。米国と軍縮合意を結んだほか、第2次世界大戦後に欧州を分断していた「鉄のカーテン」を開いて東西ドイツ統合を実現するため、西側とのパートナーシップを構築。90年にノーベル平和賞を受賞した。

一方、グラスノスチ政策で党や国家に対する批判が可能になったと同時に、国内の民族主義を刺激し、91年のソ連崩壊につながった。

プーチン大統領は2005年、ソ連崩壊は20世紀における「最大の地政学的悲劇」と表現。機会があれば元に戻したいと語っていた。

プーチン氏は31日、ゴルバチョフ氏の家族らに弔電を送り、ゴルバチョフ氏は世界の歴史の流れに多大な影響を与え、ソ連の改革に努めたとして、哀悼の意を伝えた。

弔電では「ゴルバチョフ氏は複雑で劇的な変化と大規模な外交政策、経済、社会の課題があった時期にわが国を率いた」と事実を述べただけで、1985─1991年のゴルバチョフ氏の政権運営の評価はしなかった。

ペスコフ大統領報道官は、ゴルバチョフ氏は冷戦終結に貢献した非凡な政治家だが、その歴史的役割には賛否両論があると発言。「ゴルバチョフ氏は冷戦が終わり、新生ソ連と世界、西側諸国との間に永遠のロマンスが訪れると心から信じたかった」と述べた。その上で、「それは間違いだった。100年のハネムーンも実現せず、血に飢えた相手の本性が顔を出した。このことに気づき、理解できたことは良かった」と語った。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ミシガン大消費者調査、5年先インフレ予想4.1%

ワールド

米関税に「断固たる対抗措置」、中国国営TVが短文サ

ビジネス

米2月PCE価格+2.5%、予想と一致 スタグフレ

ワールド

米加首脳が電話会談、トランプ氏「生産的」 カーニー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 6
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 8
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 9
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中