中国、軍事演習重ねて台湾中間線を「無実化」 注目される米国の対応
中国はずっと中間線を戦術的な立場から事実上受け入れていたが、2020年に外務省の報道官が「存在しない」と明言。国防省と国務院台湾事務弁公室も同調した。
ここ数日は、中国と台湾のフリゲート艦や駆逐艦が互いに追跡行動を実施。中国艦艇は台湾艦艇の隙を突いて、中間線を越えようと動き回っている。
今月に入ると、中国空軍の戦闘機も中間線を越えるようになった。短時間の出来事とはいえ、過去にそうした動きは滅多に見られなかった。
米政府は深刻視せず
台北のシンクタンク「国家政策研究財団」の安全保障分析専門家は、中間線という暗黙の合意が崩れ、偶発的な衝突のリスクが高まっていると指摘。台湾の軍と沿岸警備隊は中国軍からのより複雑な挑戦に対応できるよう、権限を拡大して法的保護を強化する方向で見直されるべきだとの考えを示した。
数週間以内には、米国の軍艦が再び台湾海峡を通航する予定になっている。ただ、米艦艇が中国艦艇の中間線越えに異を唱えるとは期待できない。
3人の米政府高官は、中国による中間線越えは戦術面で大した意味はないと一蹴。そのうちの1人は、ロイターに「中間線は象徴的な仮想のラインで、(中国が)台湾を少しばかり侮辱しているだけの話だ」と語った。
これらの高官によると、米国は中間線を絶対に維持する、ないしは中国の行動を中間線より自国側に押し戻すといった必要性をほとんど感じていないという。
米海軍大学院の学者、クリストファー・トゥーミー氏は中間線について、米海軍は法的な仕組みというより、あくまで「政治的なこしらえ物」とみなしていると断じた。
トゥーミー氏は、その危険性を過大視すべきではなく、台湾海峡は国際海峡として今後も承認され、利用されると予想。中国が人為的に引かれたラインの両側で行動しただけで、何らかの軍事作戦につながる公算は乏しいと述べた。
(Yimou Lee記者、Greg Torode記者)