最新記事

ミャンマー

ミャンマー当局、ヤンゴン在住の元英国大使を拘束 外交交渉の人質か?

2022年8月26日(金)16時20分
大塚智彦
元英国ミャンマー大使のビッキー・ボウマン氏

ミャンマー当局に拘束された元英国ミャンマー大使のビッキー・ボウマン氏 Myanmar Centre for Responsible Business (MCRB) / YouTube

<軍政が外交交渉の切り札として人質を確保?>

ミャンマー治安当局が8月24日、元英国ミャンマー大使のビッキー・ボウマン氏を入管法違反容疑で拘束し、中心都市ヤンゴンのインセイン刑務所に収監したことが関係者の証言などで25日に明らかになった。

軍事政権はボウマン氏がヤンゴン市内の当局に届け出ている住所から他の場所に無許可・無届けで移転したことが入国管理法に違反するとして同法違反幇助容疑のミャンマー人の芸術家で夫のテイン・リン氏とともに拘束したとしている。

現職ではないものの英国の元大使の身柄拘束・刑務所収容に軍政が踏み切った背景には、英国政府による軍政批判や制裁などの他に、ボウマン氏がミャンマーで行っている活動が反軍政寄りの姿勢であることなどが「怒り」を買った可能性が指摘されている。

ヤンゴンでビジネス支援の活動

ボウマン氏は2002年から06年までミャンマー駐在の英国大使を務めた経歴がある。

その後ミャンマーに在住して企業のビジネスの透明性、公平性の向上や人権問題改善などを主に活動目的とする「責任あるビジネスを目指すミャンマー・センター(MCRB)」の代表を務めて活動を続けてきた。

MCRBはミャンマー全地域で関係者との対話やセミナー、ブリーフィングなどを通じて人権尊重など責任あるビジネスを奨励する団体で2013年に創設され、ボウマン氏は代表責任者に就任していた。

MCRBはホームページに26日「ボウマン夫妻が24日に当局に拘束されたことは確認しており、即時釈放を目指して努力している」として当局に対して夫妻の釈放を求めていることを明らかにしている。

一方ミャンマーの英国大使館のスポークスマンは地元メディアなどに対して「英国人の拘束を憂慮しており、当局と接触して大使館として支援をしている」とボウマン氏という具体的な名前をあげることを避けたコメントを明らかにしている。

これは今後の軍政との交渉で「具体的なことへの言及配慮」の立場をとることで刺激を避け、早期釈放を実現させるためとみられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送NY外為市場=ドル上昇、米中緊張緩和への期待で

ビジネス

トランプ氏、自動車メーカーを一部関税から免除の計画

ビジネス

米国株式市場=続伸、ダウ419ドル高 米中貿易戦争

ビジネス

米経済活動は横ばい、関税巡り不確実性広がる=地区連
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    ウクライナ停戦交渉で欧州諸国が「譲れぬ一線」をア…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 7
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中