中国はなぜ「台湾は中国の一部」と思い込むのか──単なる妄想、それとも戦略?
CHINA’S TAIWAN ITCH
その後、台湾には4つの勢力が侵入した。鄭成功が率いる明朝遺臣団の漢民族(22年間)、清朝の満州人(200年以上)、そして近代国家としてインフラや教育を整備した日本(50年間)、第2次大戦後は蒋介石の中華民国が支配することになった。
最初に台湾を実効支配した部外者はオランダ人で、最も長く統治したのは満州人、現在の占領者は中華民国だ。そうなると、そこに中国共産党が入り込む余地は極めて小さい。
第2次大戦後のサンフランシスコ講和条約で台湾の地位が曖昧なのは、この複雑な歴史に負うところが大きい。この点が、現在のアメリカの台湾政策の基礎を成している。条約は中国の主張する「一つの中国」を認めながら、台湾は中国の一部ではないという可能性に含みを残している。
中国は自らの主張の根拠が弱いことを承知しているので、国際秩序を逸脱した行動を取り、力によって台湾を併合する準備を常にしてきた。
台湾が中国から政治・社会的に分離するプロセスについて考えるとき、18世紀にアメリカの13州がイギリスの圧制から血なまぐさい戦争を経て独立した経緯に学ぶことが適切だろう。台湾の人々がこの歴史をなぞることを選ぶなら、国際社会はそれが平和裏に行われるよう監視すべきだ──可能かどうかは心もとないが。
練乙錚(リアン・イーゼン)
YIZHENG LIAN
香港生まれ。米ミネソタ大学経済学博士。香港科学技術大学などで教え、1998年香港特別行政区政府の政策顧問に就任するが、民主化運動の支持を理由に解雇。経済紙「信報」編集長を経て2010年から日本に住む。