カードローンなど家計債務がGDPの9割に──タイの構造的問題とは?
輸出ブームと貿易黒字の恩恵はどこに消えた? JICKARO/ISTOCK
<2010年頃から輸出ブームで貿易黒字は拡大したが、労働者は消費者金融頼みに。パンデミック、そしてインフレの今、タイ政府に打てる手はあるのか?>
タイの家計債務が記録的な水準に膨らんでいる。タイ銀行によれば、昨年第4四半期の家計債務はGDPの9割に達したという。
輸出主体のタイ経済がコロナ禍で大打撃を受けたことが一因だが、それだけではない。家計債務比率の高さはパンデミック以前から続く傾向で、そこには構造的な課題が透けて見える。
タイの債務比率が急速に高まったのは2010年代前半のこと。当時はタイの通貨バーツ安と輸出ブームのおかげで貿易黒字が大幅に拡大していたが、その恩恵が労働者の賃金に反映されたのは当初の数年のみで、その後は伸び悩んだままパンデミックに突入した。これでは、多くの家庭が消費者金融などに頼り、負債が拡大するのも無理はない。
電気料金などの大幅値上げも家計を圧迫するが、政府は財政出動に消極的だ。急激なインフレと金融引き締め政策が世界的に進行するなか、タイ政府に打てる手はますます限られてきている。
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