世界中に刺客を放つイランの反体制派襲撃を止めろ
The Reeling Iranian Regime
最近アメリカで襲撃された小説家サルマン・ラシュディは、イラン最高指導者だった故ホメイニ師からイスラム教を冒瀆した罪で死刑宣告されていた(写真は2015年) Ralph Orlowski-REUTERS
<イラン革命以来、今が最も弱体化しているといえるイラン指導部は、反体制派に対してまずます危険な存在になっている>
イランの現体制は1979年の革命以来、今が最も弱体化している。捨て身で襲いかかってくる手負いのクマのようなものだ。
経済はボロボロ、ベルギーとスウェーデンの裁判所ではそれぞれ、工作員がテロや人道に反する罪で長期の懲役刑を言い渡された。現体制の中心にいるイスラム法学者たちの足下は大いに揺らいでいる。
イランの反体制派組織モジャーヘディーネ・ハルグ(MEK)は勢力を拡大し続け、イラン各地の都市で抵抗運動の担い手が育っている。最高指導者アリ・ハメネイ師や「テヘランの虐殺者」の異名を取るイブラヒム・ライシ大統領にとっては大きな頭痛の種だ。
MEKが7月下旬に、欧州唯一のイスラム教国アルバニアにある亡命拠点「アシュラフ3」で集会を行おうとしたときは、ハメネイとライシはそこに大規模な攻撃を仕掛けるべく、情報省の腕利きの殺し屋と、イラン革命防衛隊の特殊部隊であるクッズ部隊のテロリストを送り込んだ。
幸いにして、アルバニアやアメリカなど各国の情報当局が襲撃計画に関する暗号メッセージを複数傍受。アルバニア政府はMEKに対し、安全面から集会を延期するよう勧告した。
「イラン大使館」がテロ計画に関与
イランから送り込まれた工作員のうち4人はアルバニアの首都ティラナの国際空港で足止めされ、全員が国外追放処分となった。7月にはこれに先駆け、アルバニア当局がイラン情報省の工作員11人のアジトを摘発、コンピューターや携帯電話などを押収する事件もあった。
アルバニアでは2018年12月にも。イラン大使と一等書記官が国外追放処分となっている。彼らはイラン大使館内部で爆弾テロを計画した容疑により、国家の安全を脅かす人物としてブラックリストに載った。このうちの1つが、2018年3月のMEKの新年イベントを狙った爆破テロ計画だが失敗に終わっている。
2018年6月にパリで開かれたイランの反体制勢力の大規模集会を狙ったテロでは、イランの外交官1人と3人の共犯者がベルギーで禁錮20年の判決を受けた。警察がこの外交官の車を捜索したところ、イラン情報省の工作員と傭兵289人の名前と連絡先が記録されたノートが見つかった。その中にはイランからの難民として公式に認められた人物が数多く含まれており、144人はドイツに住んでいた。
アルバニアでの集会襲撃に失敗したイラン当局は、昔ながらの挙に出た。反体制派への中傷作戦だ。イラン情報省は欧米に子飼いのジャーナリストやロビイストを確保していて、ことあるごとにMEKがあたかも悪の組織であるかのように非難する。