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宇宙銀河系外で「休眠状態」の恒星質量ブラックホールが発見される
連星「VFT S243」のイメージ。大マゼラン雲のタランチュラ星雲にあり、太陽の25倍の質量を持つ高温の青い星と、少なくとも太陽の9倍の質量を持つブラックホーで構成されている。(ESO/L. Calcada)
<銀河系(天の川銀河)のすぐ隣にある銀河「大マゼラン雲」で恒星質量ブラックホールが見つかった......>
ヨーロッパ南天天文台(ESO)に設置された超大型望遠鏡VLTの6年にわたる観測により、銀河系(天の川銀河)のすぐ隣にある銀河「大マゼラン雲」で恒星質量ブラックホールが見つかった。その研究成果は2022年7月18日、学術雑誌「ネイチャー・アストロノミー」で発表されている。
「休眠状態」の恒星質量ブラックホール
恒星質量ブラックホールは、大質量の星がその寿命を迎え、自らの重力で崩壊するときに形成される。2つの星が共通の重心の周囲を公転する「連星」では、このプロセスにより、ブラックホールが明るい伴星とともに軌道に残される。この恒星質量ブラックホールは、高レベルのX線を放射していなければ「休眠状態」にあり、周囲とあまり相互作用しないため、とりわけ発見されづらい。
ベルギーのルーヴェン・カトリック大学(KU Leuven)らの国際研究チームは、大マゼラン雲にある「タランチュラ星雲」で約1000個の大質量星を詳しく調べた。天体からの光のスペクトルをもとに連星の軌道の特徴である「ゆらぎ」を探し結果、連星「VFT S243」が見つかった。
「VFTS 243」は、太陽の25倍の質量を持つ高温の青い「O型星」と太陽の9倍以上の質量の見えない伴星で構成される。この伴星は、その質量からブラックホールだとみられている。
「銀河系外で初めて検出された休眠状態の恒星質量ブラックホールだ」
「大マゼラン雲でブラックホールの候補が見つかった」との研究成果は2021年11月にも発表されているが、研究チームは、今回の発見について「銀河系外で初めて明確に検出された休眠状態の恒星質量ブラックホールだ」と主張している。
「VFTS 243」のほぼ円形の軌道と運動特性は、このブラックホールを発生させた星が強力な爆発の兆候なく消滅したことを示唆している。
研究論文の筆頭著者で蘭アムステルダム大学アントン・パンネクーク研究所のトメル・シェナー博士は「『VFTS 243』のブラックホールを形成した星は、爆発の痕跡なく、完全に崩壊したようにみえる」と解説したうえで、「このような『直接崩壊』を示唆する証拠が最近出てきているが、我々の研究成果はおそらく最も直接的なもののひとつであり、宇宙でのブラックホールの合体の起源において大きな意義がある」と述べている。