「国際金融センター」から「戦争ハブ」へ──「台湾侵攻の拠点化」する香港
FROM ECONOMIC TO MILITARY?
戦争で重要なロジスティクス面でも、香港は極めて効率的な鉄道・トラック輸送網で中国各地と緊密に連結している。標準規格の20フィートコンテナを利用すれば、物資の「ステルス輸送」は簡単だ。香港の20フィートコンテナ取扱量は1日6万個以上。中国国内のいずれの軍事基地も上回る。
さらに重要なことに、既に香港には人民解放軍部隊駐屯地が20カ所存在し、兵士計1万2000人が駐留している。短期的には、この10倍規模に増員しても問題なく受け入れられる。住民の移住で空き家になった住宅に収容すればいいからだ。中国政府は香港で、集合住宅や1棟単位での建物の購入を猛烈に推し進めている。
ただし、台湾侵攻用の軍事プラットフォームは、政治的に100%安定していなければならない。香港の場合、それを実現する手段はただ一つ。望ましくない市民を移住や服従に追い込み、残った者は拘束して、大規模な「政治的浄化」を行うことだ。
国際的な金融センターを「戦争ハブ」に変える戦略には、戦いの際は敵を欺いていいとの軍事哲学を持つ中国ならではの意外性がある。台湾とその友好国は危険なだまし討ちの可能性を無視してはならない。
練乙錚(リアン・イーゼン)
YIZHENG LIAN
香港生まれ。米ミネソタ大学経済学博士。香港科学技術大学などで教え、1998年香港特別行政区政府の政策顧問に就任するが、民主化運動の支持を理由に解雇。経済紙「信報」編集長を経て2010年から日本に住む。
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