ロシアは核威嚇でウクライナの反転攻勢を止めにくる?──米戦争研究所
Russia May Use Nuclear Threats to Stop Ukraine Counteroffensive—ISW
プーチンは再び核使用の脅しを持ち出すかもしれない Sputnik/Alexei Nikolsky/Kremlin/REUTERS
<ひとたびロシアがドンバス地方や南部州を併合すれば、「自国領土」に対する攻撃には核兵器で応じるドクトリンが適用されると、シンクタンクが警告>
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ロシアが支配しているウクライナのヘルソン、ザポリッジャ(ザポリージャ)、ドネツクとルハンスク(ルガンスク)の各地域でウクライナ側の反撃を阻止するために、核の脅しを使うかもしれない──アメリカのシンクタンクが、このような見方を示した。
国際紛争を監視するシンクタンク「軍事研究所(ISW)」は、7月19日に新たな戦況分析を発表。この中で、ロシア政府がもし(現在ロシア軍が占領している)これらの地域を直接的または間接的に併合した場合、「ロシアの領土を守るための核兵器使用を認める」という方針が、これらの地域にも適用されることになると指摘した。
ロシアの軍事ドクトリンは、ロシアの領土に対するあらゆる攻撃に対して(それが核兵器による攻撃ではなくても)、核兵器の使用を認めている。2000年以降に発表された複数のドクトリンにはいずれも、ロシアは自国や同盟国に対する「いかなる類の大量破壊兵器を使用した攻撃があった場合、それに対応するために核兵器を使用する権利を有する」と明記されている。
ロシアが推し進める「併合戦略」
ISWは戦況分析の中で、「ウクライナが占領地域の奪還を目指して反撃を続けるなか、これらの地域がロシアに併合されれば、ウクライナとそのパートナーが核の脅威にさらされることになる」と指摘した。
このISWの戦況分析に先立ち、米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は、ロシアが現在占領しているウクライナの複数の地域について、併合の準備を進めていると警告。2014年にクリミア半島を併合した際に用いた戦略を繰り返していると述べた。
カービーはホワイトハウスで行った記者会見の中で、新たに機密解除された諜報を引用し、「ロシアは併合戦略とも言えるものを展開し始めている」と述べた。
さらに彼は、ロシアが早ければ今年の秋にも、ヘルソン、ザポリッジャ、それにドネツクとルハンスクの全地域をはじめとする占領地域の併合を計画していることを示唆する「十分な証拠がある」と主張。ロシアが複数の占領地域で自国通貨のルーブルを流通させ、代理の当局者を任命し、一部の住民にロシア国籍の取得を強制して、パスポートを発行していると述べた。
ロシア安全保障会議のドミトリー・メドベージェフ副議長は17日、クリミア半島に対する攻撃があれば、ウクライナに「終末の日が訪れるだろう」と述べ、迅速かつ断固たる対応を取る考えを示した。