最新記事

感染症

「サル痘」ワクチンは感染リスクが高い「MSM」コミュニティー優先で(ファウチ博士)

Fauci Says Gay Men Should Get Monkeypox Vaccine First

2022年7月26日(火)14時35分
エド・ブラウン

サル痘にかかったリベリアの少女(1971) CDC/Wikimedia Commons

<WHOが緊急事態を宣言したサル痘の拡大を効率的に防ぐには、ワクチンを「MSM」の人々に優先的に摂取すべきだとファウチ博士は提言した>

欧米を中心に感染が広がっているサル痘のワクチン接種について、アメリカのアンソニー・ファウチ大統領首席医療顧問は、ワクチンの優先接種の対象に、男性と性行為をする男性(MSM=men who have sex with men)を含めるべきだと指摘した。

サル痘は世界各地で感染が拡大しており、米疾病対策センター(CDC)によれば、7月22日の時点で、累計で1万7000件の感染が確認されている。この事態を受けて世界保健機関(WHO)は23日、サル痘について「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。

サル痘は元来、西アフリカと中央アフリカに発生する風土病だが、2022年5月以降、欧米や中東、アジア太平洋地域に感染が急拡大している。

WHOのテドロス・アダノム事務局長は、23日に行った記者会見の中で、「サル痘は誰でも感染の可能性があるが、今回の感染拡大のひとつの特徴として、同性との性行為を行う男性、とりわけ複数のパートナーと性的関係にある男性に感染が集中している」と述べた。

「全ての国が、同性と性行為を行う男性のコミュニティーと緊密に連携し、効果的な情報とサービスを計画・実行し、感染が懸念されるコミュニティーの健康、人権と尊厳を守る適切な措置を導入することが、きわめて重要だ」

MSMコミュニティーを「優先すべき」

サル痘の感染拡大を抑制する方法の一つは、ワクチン接種だ。アメリカでは20日までに、20万回分近くのワクチンが投与されている。

ファウチは24日のMSNBCとのインタビューの中で、MSMコミュニティーに優先的にワクチン接種を行うべきかという質問に対して、そうするべきだと答えた。

ファウチは、「真に幅広い保護を行うためには、感染リスクを伴う行動を取っている人々に優先的にワクチン接種を行うべきだ。たとえばHIVの暴露前予防内服(HIVにさらされる可能性がある前に抗HIV薬を服用すること)を済ませているMSMの人々は、サル痘についても予防的措置としてワクチン接種を受けておくべきグループに分類される」と述べた。

英イースト・アングリア大学医学部のポール・ハンター教授も本誌に対し、サル痘のワクチンは感染リスクが最も高い人々に優先的に接種させるべきだと指摘。優先接種の対象とするべき人々には、MSMコミュニティーと「頻繁にさまざまな人と親密な関係を結ぶ、性的に活発なネットワークに参加している」人々が含まれると述べた。

ハンターはさらに、異性愛者の間で感染が広がるリスクについても懸念していると述べ、女性のセックスワーカーにもワクチン接種を行うべきだと語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:またトランプ氏を過小評価、米世論調査の解

ワールド

アングル:南米の環境保護、アマゾンに集中 砂漠や草

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中