参院選出馬の要友紀子「セックスワーク差別は全ての人権問題とつながっている」
aluxum-iStock
<性産業で働く人々の「誰も耳を傾けてくれなかった問題」の政策化や、当事者の政治参加は実現するのか>
7月10日に行われる参議院議員選挙で、立憲民主党から比例代表候補として出馬している要友紀子(かなめ ゆきこ)氏。彼女は、性産業で働く人々の健康と安全のために活動する団体SWASH(Sex Work And Sexual Health)の代表であり、アジア太平洋地域24カ国のセックスワーカー団体のネットワーク組織APNSW(Asia Pacific Network of Sex Workers)の理事としても活動している。
20年以上にわたり性産業で働く人々の人権擁護や支援をする中で、関連するさまざまな問題を国や社会に問いかけてきた。最近では、コロナ禍における給付金支給の対象からセックスワーカーや性産業事業者が除外されたことに抗議したり、現場の人々(当事者ら)の意見を十分に聞かず可決を急いだ議員立法「AV出演・被害防止法案(AV新法)」に提言し緊急集会を開いたりといった活動が記憶に新しい。
そんな彼女に参院選出馬の背景、国政/有権者それぞれに届けたい声などについて、ライターのヒラマツマユコが話を聞いた。
――セックスワーカーの支援と政治との結びつきについて、ピンとこない読者もいるかもしれません。そもそも「セックスワーカーを支援することは、女性が性的に搾取されない社会を作ることに反しているのではないか」という指摘がありますが。
私は常に「当事者の政治参加」と「当事者の命と健康をどう守るか」という話をしてきました。「セックスワークがある社会」に対する評価は一切していません。その土俵に乗るつもりもありません。
むしろセックスワークの是非論を焦点化することで、置き去りにされる人命と人権があるのが問題だと考えています。実際に、誰がどんな問題で困っているのかを見る必要があるというだけです。実際に性産業という市場があり、そこで働いている人たちがいるので、その人たちの人命と人権は守られなければいけないですよね。
――立憲民主党の候補者募集に応募し、出馬した経緯は?
今国会で成立した「困難女性支援法」と「売春防止法」の改正に関しては、2018年からロビー活動をしてきました。
その一環で、厚生労働省が行った「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」に参加したいと何度も要望書を出しました。性産業で働く女性たちの中にも「困難な問題を抱える女性」はたくさんいますし、切実に取り入れるべき意見を届けたいという思いでした。
しかし、何度か行われた検討会に入れてもらえる機会は一度もありませんでした。国会に提出される段階になってあらためて、直接議員から話を聞きたい、現場の人たちにも説明をしてほしいとメールや電話でたびたび問い合わせたところ、提出の直前にやっと1時間ほど女性議員から説明を受けることができました。しかし提出が決まっている内容についての説明に過ぎませんでした。
私たちセックスワーカーの声が無視されていると感じました。これが1つめの大きな絶望です。