最新記事

日本政治

参院選出馬の要友紀子「セックスワーク差別は全ての人権問題とつながっている」

2022年6月25日(土)21時10分
ヒラマツマユコ(ライター)
新宿歌舞伎町

aluxum-iStock

<性産業で働く人々の「誰も耳を傾けてくれなかった問題」の政策化や、当事者の政治参加は実現するのか>

7月10日に行われる参議院議員選挙で、立憲民主党から比例代表候補として出馬している要友紀子(かなめ ゆきこ)氏。彼女は、性産業で働く人々の健康と安全のために活動する団体SWASH(Sex Work And Sexual Health)の代表であり、アジア太平洋地域24カ国のセックスワーカー団体のネットワーク組織APNSW(Asia Pacific Network of Sex Workers)の理事としても活動している。

20年以上にわたり性産業で働く人々の人権擁護や支援をする中で、関連するさまざまな問題を国や社会に問いかけてきた。最近では、コロナ禍における給付金支給の対象からセックスワーカーや性産業事業者が除外されたことに抗議したり、現場の人々(当事者ら)の意見を十分に聞かず可決を急いだ議員立法「AV出演・被害防止法案(AV新法)」に提言し緊急集会を開いたりといった活動が記憶に新しい。

そんな彼女に参院選出馬の背景、国政/有権者それぞれに届けたい声などについて、ライターのヒラマツマユコが話を聞いた。

――セックスワーカーの支援と政治との結びつきについて、ピンとこない読者もいるかもしれません。そもそも「セックスワーカーを支援することは、女性が性的に搾取されない社会を作ることに反しているのではないか」という指摘がありますが。

私は常に「当事者の政治参加」と「当事者の命と健康をどう守るか」という話をしてきました。「セックスワークがある社会」に対する評価は一切していません。その土俵に乗るつもりもありません。

むしろセックスワークの是非論を焦点化することで、置き去りにされる人命と人権があるのが問題だと考えています。実際に、誰がどんな問題で困っているのかを見る必要があるというだけです。実際に性産業という市場があり、そこで働いている人たちがいるので、その人たちの人命と人権は守られなければいけないですよね。

――立憲民主党の候補者募集に応募し、出馬した経緯は?

今国会で成立した「困難女性支援法」と「売春防止法」の改正に関しては、2018年からロビー活動をしてきました。

その一環で、厚生労働省が行った「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」に参加したいと何度も要望書を出しました。性産業で働く女性たちの中にも「困難な問題を抱える女性」はたくさんいますし、切実に取り入れるべき意見を届けたいという思いでした。

しかし、何度か行われた検討会に入れてもらえる機会は一度もありませんでした。国会に提出される段階になってあらためて、直接議員から話を聞きたい、現場の人たちにも説明をしてほしいとメールや電話でたびたび問い合わせたところ、提出の直前にやっと1時間ほど女性議員から説明を受けることができました。しかし提出が決まっている内容についての説明に過ぎませんでした。

私たちセックスワーカーの声が無視されていると感じました。これが1つめの大きな絶望です。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中