最新記事

地球外文明

「中国の巨大な電波望遠鏡が地球外文明からの電波信号を検出した」との報道

2022年6月17日(金)17時39分
松岡由希子

中国の電波望遠鏡『天眼(スカイアイ)』が見つけたものとは...... wikimedia

<中国の電波望遠鏡『天眼(スカイアイ)』が地球外の技術的痕跡や地球外文明とおぼしき電波信号を検出した、という......>

中国科学技術部の機関紙「科技日報」は、2022年6月14日、「中国の電波望遠鏡『天眼(スカイアイ)』が地球外の技術的痕跡や地球外文明とおぼしき電波信号を検出した」と報じた。この記事はその後削除されているが、中国のSNS「微博(ウェイボー)」などで話題となり、内外のメディアでも広く取り上げられている。

通称「天眼」は、中国南西部貴州省に設置されている世界最大の電波望遠鏡「500メートル球面電波望遠鏡(FAST)」だ。最大10センチの電波の放出を検出し、天文学の様々な研究に活用されているが、そのうちのひとつが地球外知的生命体探査(SETI)である。「天眼」は2020年9月、地球外文明の探索を正式に開始した。

人工電波と疑われる2つの電波信号が見つかった

2019年に「天眼」によって観測されたデータを北京師範大学の研究チームが2020年に分析したところ、人工電波と疑われる狭帯域の電波信号2つが見つかった。2022年には既知の太陽系外惑星の観測でも、奇妙な狭帯域の電波信号1つが新たに特定されている。これらの電波信号は、通常、飛行機や人工衛星でのみ使用される狭帯域電波であることから、宇宙人の技術で作られた可能性が否定できないという。

ただし、この研究結果はまだ予備的なものにすぎない。北京師範大学の張同傑教授は「これらの電波信号はこれまでとは異なる狭帯域電波だ」とする一方、「何らかの電波干渉である可能性も非常に高い」とし、「現在、さらなる調査をすすめている」と述べている。

これまでもあった疑わしい電波は......

深宇宙から疑わしい電波が検出されるのは今回が初めてではない。1977年8月には米オハイオ州立大学の電波望遠鏡「ビッグイヤー」が「ワウシグナル」と呼ばれる非常に強い電波信号を検出した。「地球外文明によるものではないか」と指摘されたが、その後、これが検出されることはなく、その起源については謎のままだ。

また、豪州のパークス天文台とスイスのブライエン電波天文台で観測された「ペリュトン」と呼ばれる強い電波信号は、2015年の研究論文で、研究者たちが利用していた電子レンジによるものだったことが明らかにされている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中