井戸を掘って水を飲むチンパンジーが発見される
Rainforest Chimpanzees Dig Wells for Water in Fascinating, Rare Behavior
ヒト以外の動物も、時に知性と創意工夫で「隠れた資源」を手に入れる(イメージ写真) guenterguni-iStock.
<熱帯雨林の乾季に新鮮な飲み水の必要に迫られたメスのチンパンジーが、地面の下に隠された水を発見するまで>
ウガンダの熱帯雨林に住むチンパンジーが、地面に井戸を掘って新鮮な飲み水を得ていることが明らかになった。学術誌『Primates(霊長類)』のウェブ版で6月6日に発表された。
熱帯雨林に住むチンパンジーで、井戸を掘る行動が観察されたのはこれが初めてだ。飲み水は一般に岩や木の空洞や溝に溜まったものが手に入れやすいが、これはヒト以外の動物が、「隠れた資源」を知性と創意工夫で入手する事例の一つだ。
今回の論文の共著者で、スコットランドにあるセントアンドリューズ大学の霊長類研究者、キャット・ホベイターによると、井戸掘り行動は通常、乾燥したサバンナに住むチンパンジーでのみ観察される行動だという。
「井戸掘りは非常に稀な行動なので、これが熱帯雨林に住む群れにも表れたことは大きな驚きだった。彼らにとって、飲み水は真の解決策を必要するほど切羽詰まった問題だったのだろう」と、ホベイターは本誌の取材に対して述べた。
群れで習得できたのは一部
ウガンダのグループの場合、井戸掘り行動は1頭の個体に始まって、その後他の個体に広がった。
2014年にこのワイビラ熱帯雨林に移ってきた若いメスの個体が、よどんだ水たまりに井戸を掘るのが繰り返し観察されるようになったのが最初だ。この水たまりは、この群れが乾期に水を得る最後の場所として使っていたもの。論文によると、このメスはこの水たまりの底に両手で小さな穴を掘り、水が染み出てくるまで約13秒間待ってから、出てきた水を飲んだという。
そのうち同じ群れの他のチンパンジーも興味津々で観察するようになり、最終的にはこのメスが掘った井戸を利用するようになった。メスが水を飲み終わった後に、直接水を飲んだり、木の葉やコケ、あるいは両方を組み合わせた道具に水を吸い込ませたりするようになったのだ。
「他の個体がこの行動を学ぶには時間がかかっている。今のところ井戸掘りを習得したのはメスたちや若い個体に限られている」と、ホベイターは言う。「若いチンパンジーは新しい行動を身につけやすい。またメスは、授乳のためにオスより水分を必要としている。そのことが、新鮮な水を手に入れるためにこの新しい技学ぶ強い動機になっていると考えられる」
「最も興味深い点の1つは、井戸掘りを発見したメスのに対する他のチンパンジーたちの反応だ。身体が大きく、順位の高いオスたちも、このメスが井戸を掘り、水を飲み終えるまでおとなしく順番を待ち、それからおもむろにその井戸を借りる。希少な資源をめぐる行動としては、非常に珍しいことだ」