セベロドネツクが落ちても「撤退はしない、次の作戦に移る」──ルハンスク州知事
Exclusive: Ukraine Troops Retreating in Donbas Have a Plan, Luhansk Governor Says
ルハンスクは渡さない(4月9日、ロシア軍の砲撃の犠牲者を悼んで跪く市民) Viacheslav Ratynskyi-REUTERS
<セベロドネツクは大半がロシア軍に制圧されたと認めながらも、まだ諦めない。「戦略的退却」から攻勢に移る、というウクライナ軍の作戦とは>
ウクライナ軍当局は6月1日、ロシア軍が東部ルハンスク(ルガンスク)州のセベロドネツク中心部を制圧したことを認めた。だが同州のセルヒ・ハイダイ知事は本誌に対して、前線から引き揚げるウクライナ軍部隊には腹案があり、撤退せずにロシア側への抵抗を続けると述べた。
セベロドネツク出身で、ウクライナ軍司令部と協力して同地域からの避難を主導しているハイダイは、5月31日に本誌の電話取材に応じ、ロシア軍が同市の「かなりの部分」を制圧したことを認めた。セベロドネツクは、ルハンスク州でわずかに残るウクライナ支配下地域のなかの最後の要衝だ。
「ここ数日、戦闘は大幅に激化していた。ロシア軍がルハンスク全域を掌握するために、大量の部隊と武器を投入したからだ」とハイダイは説明した。「彼らにとってこれは、最優先すべき任務だった。なんらかの勝利を誇示したいロシア軍の最高司令部にとって、特別に広くもないこの地域の制圧は、達成しやすい目標だったからだ」
セベロドネツクを制圧すれば、ロシア軍はルハンスク州のほぼ全域を支配下に収めることになる。同州はウクライナの東端にある2つの州のうちのひとつで、ロシア政府はこの2州の完全掌握を重要な目標としている。
ロシアが狙うドンバス地方の完全掌握
ルハンスク州と隣接のドネツク州を制圧すれば、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ドンバス地方での勝利を宣言することができる。ドンバス地方では2014年以降、ウクライナ軍とロシア政府の支援を受けた分離独立派の争いが続いており、ロシア政府は同地域を中心に、ウクライナの「非ナチ化」と「ロシア系住民の解放」を行う名目でウクライナ侵攻に踏み切った。
状況は流動的で、ロシア軍がセベロドネツクの完全掌握にどこまで迫っているのか、ウクライナ兵が何人同市に残っているのかは分かっていない。だがロシア軍が勢いを増しているのは確かで、ウクライナ軍の各部隊は退避の準備をしている。
ハイダイは5月31日、ロシア軍がセベロドネツクの約70%を掌握したと述べた。そのわずか数時間前の電話では、「約半分」と言っていた。英国防省は6月1日、「セベロドネツクの半分以上が、チェチェン人の戦闘員を含むロシア軍の部隊によって占領されている可能性が高い」と述べた。
プーチンに忠誠を誓うチェチェン共和国のラムザン・カディロフ首長は5月末に、ロシア軍が既にセベロドネツクを制圧していると主張した。本誌はロシア外務省にコメントを求めたが、本記事の発行時点で返答はない。