最新記事

東南アジア

ミャンマー、スー・チー77歳の誕生日 軟禁状態で何を思うか

2022年6月19日(日)19時15分
大塚智彦
ミャンマーのアウン・サン・スー・チー

77歳の誕生日を迎えたミャンマーのアウン・サン・スー・チー Ann Wang - REUTERS

<民主化運動の象徴から少数民族ロヒンギャを迫害する独裁者へと評価が急転した彼女は今──>

ミャンマーの民主化運動のシンボルで民主政権の指導者アウン・サン・スー・チー氏が6月19日に77歳の誕生日を迎えた。

しかし2021年2月1日に起きたミン・アウン・フライン国軍司令官率いる国軍によるクーデターの当日に拘束、その後逮捕され約20の容疑で訴追を受け、裁判に出廷するだけという被告人としての生活を続けており、支援者や関係者による誕生日のお祝いもできない環境に置かれ続けている。

ミャンマーの中心都市ヤンゴンにあるインセイン刑務所では反軍政を掲げる民主派の収容者を中心にスー・チー氏の誕生日に合わせてお祝いと抗議活動を計画していたというが、刑務所側に情報が洩れて、6月14日に全員が独房に移されたという。

禁固刑の合計は約100年にも

スー・チー氏は逮捕後、違法に通信機器を所有しているとされて通信法違反容疑に問われたほか、クーデター以前の民主政権時代に十分な新型コロナウイルスの感染対策を怠ったとする自然災害管理法違反容疑、支援者から現金や金塊を受け取ったとする汚職防止法違反容疑、総選挙で不正に関与したとされる選挙法違反容疑、外国から通信機を購入したとして輸出入法違反容疑など20近い容疑で訴追され、裁判を受けている。

すでに判決を受けている6つの容疑に対する判決の禁固刑の合計は11年となっており、さらに今後も約13の容疑で裁判が進行中とされ、最終的な禁固刑の合計は100年近くになるとさえ言われている。

これは軍政が今後予定している総選挙からスー・チー氏とその政党「国民民主連盟(NLD)」の完全排除を狙ったもので、スー・チー氏に関しては政治生命を確実に絶とうという軍政の意図があるのは間違いないとの見方が有力だ。

スー・チー氏の動静不明が続く

裁判が始まった当初は、法廷でのスー・チー氏の写真が公開されたり、接見した弁護士を通じてコメントや健康状態が伝えられたりしていたが、2021年11月以後弁護士に対してスー・チー氏に関する情報をメディアに伝えることを裁判所が禁じたためスー・チー氏の健康状態などの近況は一切報道されなくなった。

弁護団によると最近はスー・チー氏との面会も30分に限定され、裁判での弁護活動にも支障が生じているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米経済活動は横ばい、関税巡り不確実性広がる=地区連

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米中緊張緩和への期待で安心

ビジネス

トランプ氏、自動車メーカーを一部関税から免除の計画

ビジネス

米国株式市場=続伸、ダウ419ドル高 米中貿易戦争
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    ウクライナ停戦交渉で欧州諸国が「譲れぬ一線」をア…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 7
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中