最新記事

人権問題

世界第2位の「強制労働製品輸入大国」──今こそ「ノー」と言うべき日本

A CALL TO ACTION

2022年5月26日(木)15時20分
アイリーン・リー、アナスヤ・シャム

ウイグル強制労働防止法に対する日本政府の反応を見ると、日本企業とその中国支社がアメリカに輸出する製品への同法の適用除外が、最大の関心事であることもうかがえる。こうした姿勢は事実上、強制労働が絡む製品によって利益を得る行為を是認するようなものだ。

輸入禁止という武器で戦う

日本の対応がとりわけ懸念されるのは、G20諸国のうち、アメリカに次ぐ第2の「強制労働製品輸入大国」と推定されているからだ。輸入総額は年間470億ドル相当に達するという。

18年に発表された調査によれば、日本が輸入するノート型パソコン・コンピューター・携帯電話の86%(年額約224億ドル相当)は、電子機器部門での強制労働の横行が疑われる中国やマレーシアで製造されている。

日本が輸入する衣類・装身具の80%(年額約206億ドル相当)は中国や同じく強制労働に絡むリスクが指摘されているアルゼンチン、ブラジルなどが供給元だという。

こうした数字は恥ずべきものだ。日本政府は強制労働に目をつぶって、経済的利益を追求するべきではない。

日本政府が今年2月、企業の人権侵害リスクを評価する「人権デューデリジェンス(DD)」の指針を策定すると発表したことは称賛に値する。さらに踏み込んだ措置によって最大限の効果を得ることが必要だ。

米関税法307条のように、強制労働関連産品の輸入を差し止めることは可能であり、不可欠でもある。

米関税局は16年以降、強制労働を理由とする輸入差し止めを強化し、その対象は現在、新疆からの綿・トマトやマレーシア産パーム油など、54品目に上る。21年度に差し止められた貨物は1469件で、合計金額は4億8600万ドルだった。

まだまだ十分ではないが、輸入差し止め命令の増加は企業行動の変化や政府による改革を促し、労働環境の改善を確実にしている。専門家によれば、国際的サプライチェーンでの強制労働を防止する上で、輸入禁止措置は現在利用可能な貿易ツールのうち、最も強力なものの1つだ。

主要な経済国や貿易相手国が経済的圧力をかけない限り、中国が強制労働という「政策」を放棄することはない。G7の全ての国が団結し、貿易体制から強制労働を排除するために力を合わせることが不可欠だ。

今こそ現代の奴隷制に対して日本は断固とした行動を取るときだ。いや、実際はそのときはとっくに過ぎている。アメリカ式の輸入禁止措置を採用し、強制労働に汚染されたサプライチェーンと距離を置かなければならない。行動が1日遅れれば、中国をはじめとする各地で強制労働の被害者がまた1日、苦しみ続けることになる。

©2022 The Diplomat

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送-AIが投資家の反応加速、政策伝達への影響不明

ビジネス

米2月総合PMI、1年5カ月ぶり低水準 トランプ政

ワールド

ロシア、ウクライナ復興に凍結資産活用で合意も 和平

ワールド

不法移民3.8万人強制送還、トランプ氏就任から1カ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中