「バイデンの率直さは新鮮。民主主義と独裁国の戦いは今後も続く」NATO元事務総長ラスムセン
WORLD WILL SPLIT IN TWO
――しかし今年の中間選挙や2年後の大統領選で、アメリカ政治の流れが逆転する可能性は否定できない。その点に懸念はないか?
もちろんある。私たちはアメリカ政治の動向を非常に注意深く見守っている。
中間選挙の結果によって実際に、あるいは可能性としてアメリカが再び単独主義に傾斜し、ウクライナや世界の紛争地帯など、どこであれ支援が必要な国々に対して、アメリカには支援する意思も能力もないのだと見なされた場合、世界の民主主義国で共有されている現在の連帯は弱体化することになる。ドナルド・トランプ(前米大統領)は去ったが、トランプ主義が今もアメリカに残っているとしたら問題だ。
アメリカの決然とした国際的なリーダーシップが私たちには必要だ。それが失われ、アメリカが孤立主義に戻れば、その空白は、ならず者に埋められることになる。
バイデンが大統領に就任した際、ヨーロッパに対して「アメリカは戻ってきた」と明言したことを、私たちは非常に評価している。そうした姿勢がウクライナに対しても具体的に示されたことを、うれしく思っている。
中間選挙の結果にかかわらず、こうした路線が米議会において超党派で支持されることを期待している。希望が持てるのは、これまでのところ、ウクライナとロシア、そして中国に対する政策が議会で両党からの幅広い支持を得ていることだ。
――極右勢力が政権を握ろうとする動きはアメリカに限らず、先のフランス大統領選挙でも見られた。今後もこうした勢力が、場合によってはウクライナ紛争を利用して政権を握ろうとするのではないか?
可能性はあるが、その質問は現実味に欠ける。プーチンがやっていることがあまりにとんでもないため、実際には、ヨーロッパのどこでも極右政党の勢いは弱まっている。
フランスのケースは、やや特殊だ。極右のマリーヌ・ルペンだけでなく、極左のジャンリュック・メランションも支持率を伸ばした。それはプーチンとは関係ない。
フランスでは、地方部の有権者の多くが中央から取り残されたように感じ、左右の極端な勢力に票を入れたようだ。いわば、なんとか現状を打開したくてパリのエリート層に反発した結果だ。だからこそ極右だけでなく、極左も票を伸ばした。
しかし、こうした動きを受けて、結果的にはEUの団結が強まるのではないか。
実際、ブレグジット(イギリスのEU離脱)でもEU加盟国の結束は強まった。残るどのEU加盟国でも、今やEU離脱について真剣に議論されることはない。イギリスの二の舞いを演じることは誰もが避けようとしている。
つまり、ブレグジットやプーチンの行為などによってEUに対する反感は減り、むしろEUの結束が強まっている。