フィリピン新大統領マルコス、「無資格だった」と最高裁に申立書
A Taxing Problem
かつての独裁者の息子マルコスは大統領選の得票では圧勝したが ELOISA LOPEZーREUTERS
<「民意でも悪事を覆い隠すことはできない」父マルコス時代の被害者や政敵が、立候補資格がなかったと最高裁に申し立てたが......>
フィリピン大統領選でフェルディナンド・マルコスが圧勝したのは5月9日。
それから1週間余りが過ぎた16日、人権活動家らのグループが最高裁にマルコスの当選無効を申し立てた。
申し立てによると、マルコスは脱税で有罪判決を受けているため、そもそも立候補資格がないのに、それを申告せずに出馬したという。グループは最高裁に対し、マルコスに議会で大統領就任宣言をさせないよう求めている。
選挙管理委員会はマルコスの立候補資格取り消しを求める請願を既に8件却下しており、争いの場が司法の最高機関に移った格好だ。
70ページに及ぶ申立書は「選挙は単なる票のゲームではない」という主張から始まる。「投票で示された民意でも、無資格という悪事を覆い隠すことはできない。法の維持と執行は常に何ものにも優先する」と申立書にはある。
マルコスの父は、かつて21年間にわたり独裁体制を敷いたフェルディナンド・マルコスだ。
申立人の代表は元最高裁広報官で弁護士のテッド・テ。ほかにもグループには、父マルコス時代の弾圧の被害者や政敵などが名を連ねる。
1972年9月から14年間続いた戒厳令の下、父マルコスは数千人の殺害や投獄、拷問を主導し、国庫から膨大な資産を奪い不正に蓄財した。
だが1986年に軍が後ろ盾となった反政府デモで大統領職を追われ、その3年後、家族で亡命していたハワイで死去した。
国を二分する政治分断に
その後、息子マルコスはフィリピンに帰国。北イロコス州の副知事と知事を務めた1982~85年に所得税を納めず、確定申告もしなかったとして、1995年に有罪判決を受けた。
今回の最高裁への申立書は、マルコスが立候補前に犯罪歴がないと届け出たのは虚偽であり、法に従えば彼は永久に公職に就くことはできないとしている。
「有権者の声だけで誰が被選挙権を持つか決まるのであれば、選挙法はないに等しい」と申立書は指摘する。
その上でマルコスに代わり、選挙の次点であり「適格者の中で最多の票を得た」ロブレド副大統領が大統領に就くべきだという。この主張が認められれば、選挙結果は完全に覆る(暫定得票ではマルコスが約3110万票、ロブレドが約1480万票)。