ロシア軍、マリウポリ制覇しても損害は甚大 「大規模動員か敗北か」との指摘も
非営利の米調査分析機関CNAでロシア軍を専門に研究しているマイケル・コフマン氏は「ロシア軍は戦力が劇的に弱まり、恐らく士気も相当低下している事態への対応に追われている。攻勢を続けようとする指揮官の意欲は減退し、ロシアの政治指導部全体は足元で戦術的敗北に見舞われながら、問題を先送りしているように見える」と語った。
ムジカ氏は、ロシア軍がドンバス地域の重点目標を変更し、ドネツク州でウクライナ軍の防衛態勢を打ち破れなかった後、大隊戦術グループ(BTG)を東方に振り向けていると説明。「イジウムから突破できなかったので、シエビエロドネツクとリマンに向かい、この両地でウクライナ軍を包囲することを狙っている可能性がある。これが起きるかどうかで、全く異なる展開になる」と述べた。
米ワシントンのシンクタンク、戦争研究所のジャック・キーン会長によると、ロシア軍のゲラシモフ参謀総長が今月、前線部隊で発生している問題を解決するため現地を訪れたが、彼が成果を残した形跡は見当たらない。「攻勢は事実上止まっている」という。
ハルキウ近郊では、ウクライナ側が反撃を強化し、ロシア軍をハルキウに対する砲爆撃圏の外に追い出したばかりか、ある地点では国境まで押し返している。
ムジカ氏は、ウクライナ軍は今週、ハルキウ北方でロシアとの国境地帯の相当部分を確保するかもしれないとの見方を示した。
とはいえ、ウクライナ側もロシア軍の密集度がずっと高いドンバス地域でそうした急速な盛り返しはできそうにない。コフマン氏は「厳しく長い戦いになるだろう。ロシア軍は攻勢が不首尾に終わったものの、簡単には逃げ出さないし、降伏もしない」とくぎを刺した。
砲兵戦
ロシアとウクライナの戦争は「砲兵戦」の様相も帯びている。この点でウクライナ側に米国やカナダの「M777」155ミリりゅう弾砲などロシア側より射程の長い重砲が入ってきていることが、ウクライナ軍の優位につながる可能性がある。
ムジカ氏は「ウクライナ軍はロシア軍の射程圏外から砲撃し始めている。つまりロシア軍の対砲兵砲撃の脅威にさらされず、作戦を遂行できる」と解説し、砲兵力においてロシアはまだ量的には優勢だが、質的にもそうであるかは分からなくなったとみている。
コフマン氏とムジカ氏は、プーチン氏が追加兵力を派遣するとしても、編成に数カ月かかる恐れがあるとも説明。コフマン氏は「ロシアが過去に兵役経験のある男性を召集するため、少なくとも何らかの措置を準備しているのは非常にはっきりしている。それでも今のところは、プーチン氏は決定を先送りし、ロシア軍内部の状況が悪化するのを野放しにしている。現時点では今がロシア軍の最後の攻勢に見える」と述べた。
(Tom Balmforth 記者、Jonathan Landay 記者)
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