元大統領の長男ボンボン・マルコスが当確 比大統領選、対立候補支持者のデモで混乱も
フィリピン大統領選挙でほぼ勝利を確実なものにしつつあるフェルディナンド・マルコス LISA MARIE DAVID - REUTERS
<アメリカに続き、東南アジアでも国民の分断と対立が進むのか>
5月9日に投票されたフィリピンの大統領選は非公式集計ながら11日現在で、マルコス元大統領の長男で元上院議員のフェルディナンド・マルコス(愛称ボンボン・マルコス)候補が圧倒的多数の得票で当選確実となっている。
同時に行われた副大統領選でもドゥテルテ大統領の長女で南部ミンダナオ島ダバオ市の市長サラ・ドゥテルテ候補者がリードしており、元大統領の長男と現大統領の長女による正副大統領という異例の"2世コンビ政権"誕生が濃厚となっている。
主要野党の統一候補として反ドゥテルテ大統領を掲げて政権交代を狙った副大統領のレニー・ロブレド候補は非公式集計ではボンボン・マルコス候補に大差で負けており、政権交代の実現性は難しくなっている。
選挙戦ではドゥテルテ政権の政策の「継承か転換か」が問われたと同時に、1986年にエドサ革命で打倒されたマルコス元大統領の強権・独裁的政権運営による「暗黒時代」を知る世代を中心とする「反マルコス勢力」と強い指導者を渇望する若い世代、マルコス人気が根強い地方の農村部などからの支持を背景とする「新世代」との選挙戦となった。
ボンボン・マルコス候補は父親の反政府勢力の活動家や学生に対する逮捕、拷問、殺害に加え、反政府メディアへの弾圧といった負のイメージを回避するために選挙運動中は記者会見をほとんど行わず、選挙管理委員会主催の公開討論会も欠席を続け、当選後の経済回復中心にした政策を地方遊説などで直接有権者に訴える選挙戦術に徹してきた。
対中国融和策は維持
ボンボン・マルコス候補は政権掌握後の外交政策に関して詳細をこれまで明らかにはしていないが、米国との関係を維持しつつドゥテルテ政権と同様、中国の経済に依存する融和策を維持するとの見方が有力だ。
中国との間では南シナ海の領有権問題があるが、これもドゥテルテ政権の「建前では譲らないが、本音では現状維持」という軟弱外交を継承する可能性が高い。