最新記事

ウクライナ

ロシア軍の最新戦車が破壊されたことが初めて確認される

2022年5月7日(土)12時15分
佐藤太郎

Twitter/@IAPonomarenko

<ロシアの「T-90シリーズ」最新作である「T-90M」は、ロシア軍の戦場兵器で技術的に最も進んだ戦闘車両とされているが...>

ロシアはまたしても後退に直面しているようだ。同国陸軍が誇る最新鋭の戦車「T-90M」(T-90M Proryv-3)が、ウクライナの戦線に配備されてからわずか数日で破壊されたと報じられた

5月4日、キーウ・インディペンデント紙の記者のアカウントから、ウクライナ軍によって解放された東部のハルキウ(ハリコフ)で破壊された戦車の前に立つウクライナ人ジャーナリストのアンドリー・ツァプリエンコ氏の写真が投稿された。背後で煙をあげる戦車は、「T-90M」と見られ、このタイプの戦車の破壊が確認されたのは初めてという。

ツァプリエンコ氏によると、ロシア軍は5月2日、ハリコフ奪還を試みたものの、ウクライナ軍に阻まれ失敗。

「T-90M」は2月半ばにロシアのクルスク州郊外で鉄道によって運搬される20輌以上が確認され、4月25日にウクライナ東部で存在が報告されていた。

●クルスク州郊外で運搬される「T-90M」

ウクライナ国防省は5月5日の声明で、「T-90M」の破壊を確認したことを明かし、「世界の多くの人が恐れていたロシア軍のイメージは、この2ヶ月の間に想像もつかないほど弱まっている」と強調した。

「T-90M」の上をいく「T-14アルマータ」は配備されるのか?

The Driveによると、ロシアの「T-90シリーズ」最新作である「T-90M」は、ロシアの前線兵器で技術的に最も進んだ戦闘車両だ。1990年代初頭に最初に導入された、T-90ラインの戦車のアップデートモデルで、強力なエンジン、距離計付きパノラマサイト、赤外線内部映像チャンネル、火器管制システムを装備している。

しかしウクライナ国防省曰く「これらのアップデートはT-90Mの役には立っていないようだ」

4月に、ロシア黒海艦隊の旗艦であるミサイル巡洋艦「モスクワ」が沈没したのに続き、弱体化のイメージを負うロシアにとって痛手だ。

【動画】ロシア巡洋艦「モスクワ」の「最期」

一方で、ロシアが「T-90M」を凌ぐ、「T-14アルマータ」を配備することを警戒する声も飛び交っている。攻撃力、防御力、電子システムにおいて他国の主力戦車より優れた最強の戦車と言われる「T-14アルマータ」は偵察ドローンを搭載し、対空機関銃は最大1.5 km離れた空中の高速移動物体に命中させる能力を持つ。敵のレーダーに映らないようにするステルス技術も備えている。そして車内にトイレも設置され、戦車の弱点とされてきた問題もクリアした。

とはいえ、いまだにウクライナで「T-14アルマータ」の姿は確認されていない。ロシアは資金不足のために「T-14アルマータ」は戦線での戦闘準備ができない。「T-14アルマータ」の価格は約9億円。度重なる経済制裁によって分品などの入手が難しくなり製造できていないと見られる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

EXCLUSIVE-中国、欧州EV関税支持国への投

ビジネス

中国10月製造業PMI、6カ月ぶりに50上回る 刺

ビジネス

再送-中国BYD、第3四半期は増収増益 売上高はテ

ビジネス

商船三井、通期の純利益予想を上方修正 営業益は小幅
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米大統領選と日本経済
特集:米大統領選と日本経済
2024年11月 5日/2024年11月12日号(10/29発売)

トランプ vs ハリスの結果次第で日本の金利・為替・景気はここまで変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴出! 屈辱動画がウクライナで拡散中
  • 2
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符を打つ「本当の色」とは
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    世界がいよいよ「中国を見捨てる」?...デフレ習近平…
  • 5
    北朝鮮軍とロシア軍「悪夢のコラボ」の本当の目的は…
  • 6
    娘は薬半錠で中毒死、パートナーは拳銃自殺──「フェ…
  • 7
    米供与戦車が「ロシア領内」で躍動...森に潜む敵に容…
  • 8
    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…
  • 9
    キャンピングカーに住んで半年「月40万円の節約に」…
  • 10
    衆院選敗北、石破政権の「弱体化」が日本経済にとっ…
  • 1
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 2
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴出! 屈辱動画がウクライナで拡散中
  • 3
    キャンピングカーに住んで半年「月40万円の節約に」全長10メートルの生活の魅力を語る
  • 4
    2027年で製造「禁止」に...蛍光灯がなくなったら一体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語ではないものはどれ?…
  • 6
    渡り鳥の渡り、実は無駄...? 長年の定説覆す新研究
  • 7
    北朝鮮を頼って韓国を怒らせたプーチンの大誤算
  • 8
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符…
  • 9
    世界がいよいよ「中国を見捨てる」?...デフレ習近平…
  • 10
    「決して真似しないで」...マッターホルン山頂「細す…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 8
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 9
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 10
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中