全国の中高生のうち25万人が自身の性認識に悩んでいる
中高生の4%超が性認識とのズレに戸惑っている ronniechua/iStock.
<意識・価値観の世代差が大きい日本では、学校現場での「多様な性」への理解が進みにくい>
人間は生物学的な性によって、男性と女性に分かれる。だが生物学的な性と、自身が認識している性が異なる人もいる。いわゆる性同一性障害の人だ。
性同一性障害とは「生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信をもち、かつ自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているもの」と定義される(文部科学省)。
こうした人たちへの配慮のため、最近では各種文書で性別記載欄をなくす動きが出ている。あるにしても、「分からない」や「答えたくない」といった選択肢が設けられるようになっている。これらに丸をつける人は、ネグリジブルスモール(無視できる少数)ではない。<図1>は、最近の公的調査の回答データだ。性別の設問で「どちらともいえない」「答えたくない」と回答した者,ないしは不明(空白)の者のパーセンテージを積み上げグラフにしている。
3つの合算は小学生では1%ほどだが、中高生になると4%を超える。思春期になって増えるのは、生物学的な性徴が明瞭になり、自身が抱いている性認識とのズレに戸惑うためだろう。生物学的な性により、部屋割りなどを決められることにも葛藤が生じてくる。
全国の中高生は640万人ほどなので、4%という比率を適用すると、性の認識に悩んでいる中高生の実数はおよそ25万人。ざっくり、1つの学校に15人ほどいる計算になる。1クラスに1人はいると見ていいかもしれない。
学校の側は、設備の利用面などでの配慮と同時に、性同一性障害について理解を深めておく必要がある。医療機関での診断がされていない場合でも、当の生徒や保護者の意向を踏まえながら支援を行うことは可能だ。ただ、当の生徒が抱く違和感は固定的なものではなく成長によって変わり得るものなので、頑なな先入観を持ってはならない。