最新記事

新型コロナウイルス

回復後も倦怠感や息切れ、認知新型コロナの後遺症「ロングコビット」 女性のほうが影響を受けやすい

2022年4月29日(金)10時18分
松岡由希子

女性のほうが男性よりもロングコビットの症状を訴える人が多い...... golubovy-iStock

<新型コロナ回復後も倦怠感や息切れ、認知機能障害などの症状が数カ月にわたって続く「ロングコビット」についてはの調査が行われた......>

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復後も倦怠感や息切れ、認知機能障害などの症状が数カ月にわたって続く「ロングコビット」については現時点で明らかになっていないことが多く、有効な治療方法もまだ確立されていない。

英国の研究チームは、新型コロナウイルスに感染して英国の医療施設39カ所で入院治療を受け、2020年3月7日から2021年4月18日までに退院した2320人を対象に、退院から5か月後と1年後の追跡調査を実施。その調査結果を2022年4月23日、医学雑誌「ランセット・レスピラトリー・メディシン」で発表した。

退院から1年、倦怠感、筋肉痛、思考力の低下、短期記憶障......

退院から5か月後と1年後の両方で追跡調査に参加したのは対象者のうち32.7%にあたる807人。平均年齢は58.7歳で、35.6%は女性、27.8%は急性期に人工呼吸器による治療を受けている。

退院から5か月後に全快した割合は25.5%、1年後に全快した割合は28.9%で、退院から5カ月後と1年後でその割合にあまり変化はなかった。退院から1年後にみられる持続的な症状として、倦怠感、筋肉痛、睡眠不足、息切れ、関節痛や腫れ、思考力の低下、短期記憶障害などがある。

この調査結果では、退院から1年後も全快しづらいリスク因子として「女性」、「肥満」、「急性期での人工呼吸器による治療」をあげている。女性は33%全快しづらく、肥満の人は50%、急性期に人工呼吸器による治療を受けた人は58%全快しづらい。

「新たな長期の疾患としてまん延するおそれがある」

研究論文では「新型コロナウイルス感染症で入院治療した後に全快した人は少数にとどまった。患者の健康にまつわるQOL(生活の質)は入院前に比べて低下していた」とし、「有効な治療方法がなければ、ロングコビットが新たな長期の疾患としてまん延するおそれがある」と警鐘を鳴らしている。

「女性のほうが男性よりもロングコビットの症状を訴える人が多い」との研究結果は、伊パルマ大学の研究チームが2022年3月に発表した論文でも示されている。新型コロナウイルスに感染した患者223人を対象に急性期から5カ月後の追跡調査を行ったところ、女性のほうが男性よりも、呼吸困難、脱力感、胸の痛み、動悸、睡眠障害を訴える人が多かったという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中