どんな手を使っても「勝利」したいプーチンが、ドンバスに執着する理由
Donbas Could Go Bad, Too
ウクライナ側が抵抗を続けるマリウポリの製鉄所に、親ロシア派部隊の戦車が攻め入る(4月16日)MAXIMILIAN CLARKE-SOPA IMAGES-LIGHTROCKET/GETTY IMAGES
<キーウを撤退したロシア軍は東部地域の制圧に集中。今までとは異なる新たな戦闘が始まった>
後退、後退、そして後退──。ロシア軍はウクライナ軍に行く手を阻まれ、最大で2万人の兵士を失った。
首都キーウ(キエフ)を制圧するという野心的な目標も諦め、東部のドンバス地方を掌握する作戦に切り替えている。
ウクライナへの侵攻開始から8週間以上が過ぎた。現時点での大きな問題は、ロシア軍が第1段階の惨状から教訓を得たかどうか。そして新たな戦線(国境から近く、平坦で開けた地形だ)がロシア軍に有利かどうかだ。
戦闘の第2段階では、今までより多くの死傷者が予想される。第2次大戦後の欧州では行われていない戦車同士の対戦を含め、消耗戦が続くだろう。
両陣営は猛攻撃に備えて、相手の陣地を砲撃。過酷な戦闘に突入する前に敵の持久力を奪い、士気の低下を狙っている。
しばらく前からロシア軍は、ウクライナ国境沿いの約500キロにわたる地域に戦車部隊を配備していた。その目的は、戦闘が激化した場合に防衛線を突破してウクライナ軍を包囲することだ。
しかし、この戦術はウクライナ側が逆手に取ることができる。ウクライナ軍は攻撃してくるロシア軍を突破して逆に相手側を包囲し、補給路を断とうとするはずだ。
ウクライナ東部のロシア軍は線路を補給路として利用しているが、ウクライナ軍は線路の爆破にたけている。
ドンバスの戦況が持つ意味は大きい。石炭が豊富な工業地域であり、ウクライナの人口の約6%が住む。この地域での勝敗は、ウクライナ全土に影響を及ぼす。
ロシア軍は全土で攻勢を強め、キーウやリビウなど西方の都市で民間施設や軍事目標を爆撃する一方、南東部のマリウポリを包囲してきた。
ロシア軍がドンバスで勝利すれば、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はウクライナ全土の制圧か、少なくともウォロディミル・ゼレンスキー大統領の打倒という、一度は諦めた野望を再び抱くかもしれない。