最新記事

ウクライナ

どんな手を使っても「勝利」したいプーチンが、ドンバスに執着する理由

Donbas Could Go Bad, Too

2022年4月27日(水)17時25分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)
ドンバス

ウクライナ側が抵抗を続けるマリウポリの製鉄所に、親ロシア派部隊の戦車が攻め入る(4月16日)MAXIMILIAN CLARKE-SOPA IMAGES-LIGHTROCKET/GETTY IMAGES

<キーウを撤退したロシア軍は東部地域の制圧に集中。今までとは異なる新たな戦闘が始まった>

後退、後退、そして後退──。ロシア軍はウクライナ軍に行く手を阻まれ、最大で2万人の兵士を失った。

首都キーウ(キエフ)を制圧するという野心的な目標も諦め、東部のドンバス地方を掌握する作戦に切り替えている。

ウクライナへの侵攻開始から8週間以上が過ぎた。現時点での大きな問題は、ロシア軍が第1段階の惨状から教訓を得たかどうか。そして新たな戦線(国境から近く、平坦で開けた地形だ)がロシア軍に有利かどうかだ。

戦闘の第2段階では、今までより多くの死傷者が予想される。第2次大戦後の欧州では行われていない戦車同士の対戦を含め、消耗戦が続くだろう。

両陣営は猛攻撃に備えて、相手の陣地を砲撃。過酷な戦闘に突入する前に敵の持久力を奪い、士気の低下を狙っている。

しばらく前からロシア軍は、ウクライナ国境沿いの約500キロにわたる地域に戦車部隊を配備していた。その目的は、戦闘が激化した場合に防衛線を突破してウクライナ軍を包囲することだ。

しかし、この戦術はウクライナ側が逆手に取ることができる。ウクライナ軍は攻撃してくるロシア軍を突破して逆に相手側を包囲し、補給路を断とうとするはずだ。

ウクライナ東部のロシア軍は線路を補給路として利用しているが、ウクライナ軍は線路の爆破にたけている。

ドンバスの戦況が持つ意味は大きい。石炭が豊富な工業地域であり、ウクライナの人口の約6%が住む。この地域での勝敗は、ウクライナ全土に影響を及ぼす。

ロシア軍は全土で攻勢を強め、キーウやリビウなど西方の都市で民間施設や軍事目標を爆撃する一方、南東部のマリウポリを包囲してきた。

ロシア軍がドンバスで勝利すれば、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はウクライナ全土の制圧か、少なくともウォロディミル・ゼレンスキー大統領の打倒という、一度は諦めた野望を再び抱くかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トヨタのHV、需要急増で世界的に供給逼迫 納期が長

ビジネス

アングル:トランプ関税発表に身構える市場、不確実性

ビジネス

欧州自らが未来を適切に管理する必要、トランプ関税巡

ワールド

イラン最高指導者、トランプ氏の攻撃警告に反発 「強
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 5
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中