最新記事

ウクライナ戦争

ロシア軍新司令官「シリアの虐殺者」は何者か 経歴、戦歴、東部戦線の見通し

Brutal New Commander

2022年4月18日(月)16時25分
ジャック・デッチ(フォーリン・ポリシー誌記者)、エイミー・マッキノン(フォーリン・ポリシー誌記者)

「最大の課題は、戦闘で大きな痛手を負ったばらばらの部隊を、複数の戦線を含む攻撃力として統合することだ」と、コフマンは指摘する。

「そのためにどのような指揮系統を確立しているのか、現時点では分からない」

鉄道駅の避難民を攻撃

西側の情報当局によると、この1カ月余りの戦闘で、ウクライナで戦うロシア軍の大隊戦術群の4分の1近くが戦闘不能に陥っているとみられる。

ドンバス地方と周辺には20の大隊戦術群が動員されているが、11日の時点でウクライナ国内にいるのは半分強だと、先の国防総省高官は語る。

8日にロシア軍は東部ドネツク州のウクライナ支配地域にあるクラマトルスクの鉄道駅を弾道ミサイルで攻撃し、50人以上が死亡した。この地域では近く戦闘が激化するといわれており、数千人が避難のため駅のホームに集まっていた。

この攻撃からロシア軍の戦略の輪郭が見えてきたと、米当局者は言う。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は11日、ロシア軍が包囲を続けている南東部の港湾都市マリウポリで、人道支援物資が断たれて「数万人の」市民が殺されていると訴えた。

「ロシア軍の卑劣さと残虐さが底なしであることは明らかだ」と、先の国防総省高官は11日に記者団に語った。

「非常に恐ろしい結果になる可能性も覚悟している」

ロシアがドンバスに注力するのは、停戦協議と戦闘を同時に行うという前例を踏まえているのではないかと、専門家は考えている。

シリアでロシアはアサド側の軍勢に国土の大部分を奪還させようとしたが、失敗に終わり、ドボルニコフは分断攻略を試みた。

これはロシアが交渉を通じてシリア領内に4つの緊張緩和地帯を設け、シリア軍がそれを1つずつ──その多くは化学兵器を使って──狙い撃ちするというものだった。

「シリア全土に及ぶ軍事行動は壊滅的に失敗した。そこで、1つずつ地域を占領していき、外交的・地政学的な既成事実をつくり出そうとした」と、リスターは言う。

ロシアの戦争が民間人を危険にさらすことは、ウクライナでも既に例外ではない。そしてドボルニコフは、それを当たり前のことにしてしまうと、彼の残忍なスタイルをよく知る元米政府高官は言う。

元米国防次官補代理(中東担当)でCIA準軍事作戦将校も務めたミック・マルロイは次のように語る。

「民間人を標的にすることを、容認するだけでなく実際に促進するという点で、彼は一貫している。(プーチンは)魂を売っても構わないという将軍を探す必要はない。この男は既に魂を売り渡している」

From Foreign Policy Magazine

20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・エジプト首脳が電話会談、ガザ問題など協議

ビジネス

米国例外主義に幕、海外への分散投資が適切=PIMC

ビジネス

クアルコムが英アルファウェーブ買収提案を検討

ビジネス

トランプ氏、TikTok巡る最終案を2日に検討=米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中